2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト・ミトコンドリアβ酸化異常症の代謝動態と分子解析
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10F00430
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山口 清次 島根大学, 医学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PUREVSUREN Jamiyan 島根大学, 医学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 脂肪酸代謝異常 / ミトコンドリアβ酸化 / 分子解析 / カルニチン欠乏症 / サイトカイン / MCAD欠損症 |
Research Abstract |
平成23年度の研究成果は以下の通りである。 1)代表的な脂肪酸代謝異常である中鎖アシル-CoA脱水素酵素(MCAD)欠損症の研究:日本人患者について、臨床的・遺伝学研究を行った。患者18例と保因者2例である。発症してから診断された患者9人中8人は死亡するか後遺症を残した。発症前に診断された9例は全例が発達正常で発症のエピソードはない。発症前9例中8例は新生児マススクリーニングで発見された。残る1例は同胞スクリーニングによって発見された。 遺伝学的にはc.449-452delの変異が、日本人患者のアレルの44.5%を占めコモン変異であった。韓国人患者3例では6アレル中3アレルに同様の変異が検出されている。日本と韓国の患者には類似性があり、今後他のアジア諸国などのの遺伝背景を比較するための基礎的情報として重要である。 2)全身性カルニチン欠乏症の診断法の研究:全身性カルニチン欠乏症はカルニチントランスポーター(OCTN2)の異常によって起こる。脂肪酸代謝異常症の酵素診断法として培養細胞とタンデムマスを組み合わせたin vitro probe assay(IVP assay)があるが、これではOCTN2欠損症を診断することはできない。IVP assayで用いるカルニチンの量を変えるなど工夫して、新しい診断法を確立した。タンデムマス法が新生児マススクリーニングに導入され、非特異的なケースを含めカルニチン低値の新生児が発見されることが多くなるが、確定診断法として意義が大きい。 3)サイトカインのβ酸化能に及ぼす影響:小児では発熱時に急性脳症におちいることがある。それが発熱時に濃度が上昇するいくつかのサイトカインの及ぼす影響をIVP assayで検討したところ、検討したサイトカインのうちIL1とTNFαはβ酸化を抑制し、IL10とINFγはβ酸化に影響しないことが観察された。小児の発熱と急性脳症発症の機序解明に有用な情報となると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
全身性カルニチン欠乏症のIVP assayによる診断法の確立を目指していたが、加えて、診断の困難であったCPT1欠損症の診断法もほぼ確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪酸代謝異常症のうち、MCAD欠損症の日本人20例について臨床的、遺伝子的特徴を明らかにした。これから他の脂肪酸代謝異常症(グルタル酸血症2型やVLCAD欠損症、三頭酵素欠損症など)についても日本人患者の特徴を明らかにして、これからアジアをはじめとする国々との共同研究によって、遺伝背景のちがいや、生活習慣などによる臨床像のちがいを明らかにする。 小児の急性脳症の機序解明のために、発熱や使用される薬剤のβ酸化への影響を明らかにして、結果的により安全な治療技術の向上を図る。
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