2011 Fiscal Year Annual Research Report
言語と「遊び」:現代社会におけるコミュニケーションに関する対照研究
Project/Area Number |
10F00829
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今井 忍 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VAAGE Goran 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 遊び / キャラ / スティグマ / Play / 若者言葉 / 言語変化 / 言語変異 / 人称 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「遊び」という要因が日本語あるいは英語・ノルウェー語の運用およびコミュニケーションに対してどのような影響を与えているか明らかにすることである。Crystal(1999)Language Play,をはじめ、Ross(1998)The Language of Humour,Henricks(2006)Play Reconsideredなどの先行研究における議論が有益であることが確認できたが、これらの研究が描く遊びの枠組みが日本語に当てはまらないことを明らかにした。たとえば、これらは日本語のやり取りにとって欠かせないツッコミを扱っていない。これは欧米のお笑いがボケで止まるからである。一方、金水(2003)「バーチャル日本語」などの文献は日本語におけることばと遊びのさまざまな面を研究対象にしているが、これはあくまでマンガなどのいわゆるバーチャルの世界の遊びであり、現代日本語の日常会話におけることば遊びは全く注目されていない。 欧米の資料と日本の資料の間のギャップを埋めるために本研究はまず、フィールドワークによるデータを分析し、現代日本語・英語・ノルウェー語のことば遊びの構造を明らかにした。その次にこれらの言語の間の相違点を検討する枠組みを立てた。次に、この枠組みを使ってことば遊びの機能、すなわちコミュニケーションに対する影響を研究してきた。遊びの機能には、非標準言語を使用するきっかけ、キャラを演じること、個性を強調すること、甘えること、親密さを強めること、場を調和させることなどがあることが明らかになった。研究分野・方法論を踏まえて、現在理論を強化するためにまた新たなデータを収集する予定である。 現代日本社会はポストモダン時代の局面に入ったと言える。遊びも言語は人間にとって中心となる概念であり、何より社会の変化を反映するものであるため、さらに研究する必要があると主張したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究自体は順調に進み、多数の興味深い結果を収めてきた。一定の範囲内で現代社会におけるコミュニケーションのモデルを構築することが可能であるように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は社会言語学・社会学・心理学の分野において長年の実りある研究の基盤に基づいている。残り時間はわずか半年だが、最終調査を行い、いくつかの明快な結論を引き出すことがこれからの重要課題となる。当初予定していたよりも現象の範囲を絞って、より明確な一般化を試みたい。
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