2011 Fiscal Year Annual Research Report
菌根呼吸への炭素配分・炭素安定同位体ラベリング手法を用いた野外観測
Project/Area Number |
10F00832
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大澤 晃 京都大学, 農学研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ANDREASSON F.E. 京都大学, 農学研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 菌根菌 / CO2フラックス / 呼吸 / 微生物 / 13Cラベリング / 炭素循環 |
Research Abstract |
森林炭素循環において、土壌から放出される炭素は、生態系全体の放出量の3分の2を占めるともいわれており、地下部の果たす役割は重要である。しかし、根系から土壌への炭素の流れはブラックボックスとして残されており、独立栄養呼吸の特性を持つ根呼吸と分解呼吸の間の過渡的な特性をもつ菌根や菌糸の炭素収支の定量が求められている。一次生産者である植物の根系から、菌根、菌糸を介して土壌へと炭素が流れていく部分にスポットをあてるのが本研究である。 そのために、菌糸をトラップできるメッシュバッグを試験地土壌に埋設し、その中に含まれる菌量とそこから放出される呼吸量を測定する実験1と、菌糸呼吸量の連続観測・炭素安定同位体ラベリング手法からなる実験2を組み合わせて行ってきた。実験1の特徴は、従来おこなわれてきたように、多数のメッシュバッグを埋設し、進入した菌量を計測するもので、本研究では加えて呼吸量を現場で測定し、二酸化炭素放出量の評価も行っている。これは土壌表面から放出される二酸化炭素量における、菌糸の役割を評価するためであり、春から夏にかけて増加し、秋に減少する呼吸量の季節変化が観測されている。また実験2の特徴は、菌糸からの呼吸量を連続的に測定しようとするもので、土壌呼吸の独立栄養呼吸と分解呼吸の分離において、菌糸のCO2放出特性をあきらかにする有効なアプローチとなると考えられる。試験地に、サイズの異なるメッシュによって、菌糸だけしか侵入できない観測区を作成し、菌糸の呼吸量の連続測定を行っている。炭素安定同位体ラベリング手法とは、13CO2を光合成によってに取り込ませ、幹や根、菌糸などからの放出を測定することで、樹体内の炭素の流れをトレースするものであり、この手法によって、菌糸への炭素の流れが明らかになる。成功すればこれまでブラックボックスとされてきた土壌-菌根圏の炭素動態に大きなインパクトを与えると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在のところ、実験1は、現在滞りなく実施されている。しかし実験2のうち、2011年に行った炭素安定同位体ラベリングの結果では、樹木の幹・太い根・細根から放出される呼吸中に13CO2が検出されたが、根圏の菌糸呼吸からは有意なシグナルが検出されなかった。これは、菌糸チャンバーに、十分な菌糸が発達する前にラベリングがおこなわれたか、あるいはラベリングの強度が十分ではなかったことが考えられる。そのため、当該外国人特別研究員の在日研究期間の延長を申請し、2012年の生育期にもう一度ラベリングを行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2012年の生育期(春-秋)に十分な生育期間を設けた菌糸チャンバーを用い、吸収強度を上げたラベリング実験を適用する必要がある。この実験は光合成生産に対する菌糸の消費のタイミングを評価するものであり菌糸のもつ独立-従属栄養呼吸、過渡特性の評価の中で重要な項目となる。また実験1は、菌量の測定と呼吸量の測定を組み合わせた新しい実験である。そのため、実験期間を延長し、2011年・2012年の2回の生育期を測定することができれば、その結果と、森林の生産量(NPP)や環境要因と比較することが、結果の検証をするためにも非常に有効である。
|
-
-
-
[Presentation] Mycorrhizal Hyphae Respiration and Production2012
Author(s)
Frida Andreasson, Masako Dannoura, Yuji Kominami, Yasuhiro Hirano, Naoki Makita
Organizer
59th Annual Meeting of Ecological Society of Japan joint with The 5th EAFES (East Asian Federation of Ecological Societies) International Congress
Place of Presentation
龍谷大学、大津、日本
Year and Date
20120317-20120321
-
[Presentation] Mycorrhizal Hyphae Respiration2011
Author(s)
Frida Andreasson, Masako Dannoura, Yuji Kominami, Yasuhiro Hirano, Mioko Ataka, Naoki Makita
Organizer
h meeting of JSRR (Japanese Society of Root Resear
Place of Presentation
東京大学、東京、日本
Year and Date
20111105-20111106