2011 Fiscal Year Annual Research Report
性淘汰が駆動する雄による子育て行動の進化 : コオイムシ科昆虫を用いた実験的検証
Project/Area Number |
10J00004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大庭 伸也 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 父親による子の保護 / 性淘汰 / 行動生態学 / コオイムシ科昆虫 |
Research Abstract |
節足動物ではメス親が子の保護を行うことが一般的なのに対し、なぜ、一部の分類群においてはオス親が子の保護を行うのだろうか。近年、オスの保護能力がメスによって選ばれる結果として、オスによる子の保護が進化し得るという性淘汰を強調した仮説が提唱された(Tallamy2000,2001)。本研究の主な目的は、オス親が単独で子の保護を行う代表的な分類群であるコオイムシ科昆虫を材料に、オスによる子の保護に性淘汰が与える影響を明らかにすることである。Tallamyの性淘汰仮説によると、オスの卵保護能力が性淘汰によって進化してきたとすれば、雄の卵保護自体が雌の配偶者選択の標的形質になると予測される。今年度はこの予測を検証するため、日本産のコオイムシ科昆虫・Appasus属(コオイムシやオオコオイムシ)を対象として詳細な調査を行った。室内行動観察の結果から、両種ともメスは卵保護オスに対してより多くの卵を産みつける傾向が検出された。また野外操作実験を行った結果、オスの体サイズではなく背中に卵を背負っているかどうかが雌の配偶者選択のキーとなることが明らかになった。次に、Appasus属で観察された結果が近縁種のコオイムシでも観察されるのかどうかを確かめるため、東南アジアに生息するDiplonychus属を対象に野外操作実験を行った。その結果、サンプルサイズは小さいものの卵を保有しているオスが保有していないオスよりも有意に多くの卵を背負うことが分かった。この結果は、国内のAppasus属のコオイムシ類のみならず、他の属のコオイムシでも共通のメカニズムでオスの卵保護行動が進化したことを示唆している。
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