2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00079
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂田 一樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アレン / 相間移動条件 / アルキル化 / 不斉反応 / クムレノレート / マンニッヒ型反応 / 不斉触媒 / 軸不斉 |
Research Abstract |
軸不斉を有するアレン化合物は合成中間体として高い汎用性が知られているが、その触媒的不斉合成法の報告は数が限られている。その中でも全てが水素以外で置換された四置換軸不斉アレンの一般的な触媒的不斉合成法の報告は未だなされていない。その背景の中申請者は、光学活性第四級アンモニウム塩を相間移動触媒として用いた比較的穏和な条件での、汎用性の高い四置換軸不斉アレンの触媒的不斉合成法の開発を目指して本研究課題を進めている。 今年度申請者はまず、前年度から手がけている相間移動条件におけるアレン1,3-ジカルボキシレートの不斉アルキル化反応の研究をを継続して行った。本反応では、触媒によりエナンチオ選択性と反応位置選択性を同時に制御しなければならないため当初条件検討は難航を極めたが精力的な基質・触媒検討の結果、目的の炭素四置換光学活性アレン化合物を単離収率63%、95%eeで得ることに成功した。この成果は海外一流査読付き学術雑誌に投稿準備中である。 また、基質として同様にアレン1,3-ジカルボキシレートを用い、求電子剤としてスルポニルイミンを用いたマンニッヒ型反応による四置換軸不斉アレンの触媒的不斉合成法の開発にも着手した。本反応を相間移動触媒条件で行ったところ、上記のアルキル化反応で問題となっていた反応生成物の位置選択性の問題が解決し、得られたのはアレン化合物のみであった。詳細な反応条件検討や、申請者独自のアイデアを盛り込んだ触媒構造の設計により、96:4の高いジアステレオ選択性、96%eeの高いエナンチオ選択性でキラルアミン部位も有する四置換軸不斉アレンを合成することに成功した。本反応結果についても、現在海外一流査読付き学術雑誌に投稿準備中である。この反応系の成功により、アルキルハライドだけでなくそれ以外の求電子剤を用いた場合でも高い立体選択性で目的の四置換アレンが合成可能だということを示すことが出来、本手法の高い汎用性を実証することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の初頭では、アルキル化反応による四置換アレンの合成法の開発を本年度中に完成させたいと考えていたのだが、実際はそのアルキル化反応は本年度前半で開発を達成することができた。また、本年度後半ではスルポニルイミンを用いたマンニッヒ型反応による四置換アレン合成法の開発にも成功し、予想以上の研究成果が得られた年度となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今回開発に成功したアレン1,3-ジカルボキシレートを反応基質とした四置換軸不斉アレン合成において、アルキルハライド以外の求電子剤を用いることで、様々な骨格を有する四置換アレンの合成法の開発に携わりたいと考えている。また、反応基質の電子吸引性基の一つを異なる官能基に変えることで、更に生成物の多様性を確保しようとも考えている。それでも更に時間が残されていれば、これまでに開発した軸不斉四置換アレンを合成中間体として用いた天然物の全合成研究の検討についても視野に入れて研究を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)