2010 Fiscal Year Annual Research Report
高度変成岩に含まれる流体包有物と微量元素の挙動解明にもとづく造山帯形成過程の研究
Project/Area Number |
10J00116
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 記之 千葉大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高温・超高温変成岩 / 高圧・超高圧変成岩 / 部分溶融 / 流体包有物 / Raman / メルト / Nanogranite / ボヘミア地塊 |
Research Abstract |
下部地殻を構成する高度変成岩が、地下深部で部分溶融によるメルトを伴って形成されたのか否か、また流体活動が部分溶融に果たす役割を知るため、5月5日~18日にかけて、チェコ共和国カレル大学・チェコ地質アカデミーに滞在し、野外調査を行った。特に、高温・超高温変成岩と高圧・超高圧変成岩の関係性を調べるため、詳細な地質調査を行った。野外露頭では部分溶融組織の観察を行い、各化学分析、実験のための岩石試料を採取した(約120kg)。また、九州中部肥後変成帯での野外調査を行い、肥後変成帯の高温部から、粗粒なザクロ石を含む岩石試料の採取(約50kg)を行った。採取し持ち帰った岩石試料の観察・分析の結果、チェコ・ボヘミア地塊の試料からは、高圧条件下(地下約60km以深)に存在したと考えられる、多数の流体包有物を見出した。この成果は、学術論文「Kobayashi et al. 2011」として公表した。さらに、流体包有物は主にCO_2-N_2で構成されているが、少量のH_2Oを含むことをRaman分析から、新たに見出した。このことは、高圧条件下において流体と共存したメルトが存在していた可能性を強く示唆するものであり、非常に重要な新知見である。また、部分溶融によって生じたと考えられるメルトの直接的な証拠である、多相包有物"Nanogranite" (Cesare 2009 : Hiroi et al., 2010)を採取試料の中から見出した。このNanograniteの発見は、大きな過冷却度の環境下で生成されたことを示唆するが、固結後、なぜ粗粒の結晶粒に再結晶しなかったのか等、不明の点も少なくない。しかし、それらは高温・超高温広域変成岩の部分融解現象ならびに流動、移動、混合、上昇、冷却等の諸過程の解明に新しい手掛かりとなるものである。また、新学術領域「地殻流体研究会」に参加し、地殻流体に関する最先端の研究についての情報収集を行った。さらに、貝本地質学会第117年学術大会(富山大会)においては、これまでの肥後変成帯での部分溶融環象の研究成果を総括し、招待講演として発表した。
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Research Products
(11 results)