2011 Fiscal Year Annual Research Report
高度変成岩に含まれる流体包有物と微量元素の挙動解明にもとづく造山帯形成過程の研究
Project/Area Number |
10J00116
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 記之 千葉大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高温・超高温変成岩 / 部分融解 / ボヘミア山塊 / 粗粒ザクロ石 / モナザイト / 年代測定 / マイクロサーモメトリー / Raman |
Research Abstract |
大陸下部地殻を構成する、高温・超高温広域変成岩の部分融解現象ならびに流動、移動、混合、上昇、冷却等の諸過程の解明するため、昨年度に国内外(チェコ共和国・九州熊本県)での野外調査を行い、採取した研究試料の分析・解析を行っている。 2011年5月には、日本地球惑星科学連合2011年大会の国際セッションにおいて、チェコ・ボヘミア山塊に産する高度変成岩の研究成果を英語で口頭発表した。さらに、2011年8月、チェコ・プラハで開催された「第9回国際エクロジャイト会議」「ゴールドシュミット会議2011」に参加発表を行った。国際エクロジャイト会議では、野外巡検の案内人を務めた。そして、2011年9月1日~2012年2月6日までの間、イギリス・エジンバラ大学のHarley教授の研究室に長期滞在し、ボヘミア山塊に産する粗粒ザクロ石を含む泥質片麻岩の各種の実験分析を行った。この粗粒ザクロ石はKobayashi et al.(2011)によって、リン(P)に乏しい自形の中心部(コア:Stage 1)700-900℃,1.5-2.3GPa、Pに富む外縁部(リム:Stage 2)730-830℃,1.0-1.3GPa、Pに乏しい最外縁部(outermostリム:Stage 3)740-850℃,0.6-0.8GPaに区分されている。エジンバラ大学では、EPMAを用いて、粗粒ザクロ石泥質片麻岩中のモナザイトの年代測定を行った。Stage 1のモナザイトは、336±11Ma、Stage2のモナザイトは、335.4±7.2Ma、Stage 3のモナザイトからは334.9±3.9Maの年代値が得られた。得られた各Stageの年代値は誤差の範囲内で一致していた。この成果から、本岩体は高圧条件にまで沈み込んだ後、急速に上昇をしていたことが示唆される。また、CO_2流体包有物の密度測定の2つの手法(マイクロサーモメトリー法とRaman分光法)の精確度や適応範囲に関して比較研究を行った。その結果、様々なCO_2流体包有物には、両手法を組み合わせて密度を測定し、圧力推定をすることで、地下深部(地殻~マントル)構造をより明瞭にできることを指摘した。この研究成果は、学術論文「Kobayashi et al.,2012 (in press)」として国際学術誌"Journal of Raman Spectroscopy"に受理され現在印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微量元素及び流体包有物の解析から、高圧条件下(地下約60km以深)に存在した多数の流体包有物を見出した。この成果は、学術論文「Kobayashi et al., 2011」として公表した。さらに、年代測定から部分溶融過程に関する新知見も得つつある。そしてCO_2流体包有物の密度測定の2つの手法の比較研究を行い、その成果は「Kobayashi et al, 2012(in press)」として現在印刷中である。以上の重要な研究成果が公表されたことは、非常に評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、本研究では、地下約60km以上の深部では流体とメルトが、地下約40km~15kmの間では部分溶融によるメルトが活動していることを明らかにした。また、モナザイト年代測定やザクロ石SIMS分析を行い、新たなデータを得た。 今後は、研究成果を整理・考察・解析し、地下深部での流体活動・地下深部物質の上昇機構を復元し、各化学分析データに基づいて、地下深部での流体活動・部分溶融に伴った物質循環による、造山帯形成史モデルを構築する。また、日本国内の高温低圧型の変成帯、世界各地の高温・超高温変成帯との比較を行い、プレート収敏域深部における流体活動を伴った部分溶融現象のモデル検証を行っていく。
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Research Products
(12 results)