2012 Fiscal Year Annual Research Report
高度変成岩に含まれる流体包有物と微量元素の挙動解明にもとづく造山帯形成過程の研究
Project/Area Number |
10J00116
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 記之 千葉大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 高温高圧変成岩 / 部分溶融 / チェコ共和国 / ボヘミア山塊 / 粗粒ザクロ石 / 泥質片麻岩 / EPMA / 火山岩様包有物 |
Research Abstract |
大陸下部地殻を構成する、高温高圧変成岩の部分融解現象ならびに流動、移動、混合、上昇、冷却、それらの時期の実態解明のため、国内外(チェコ共和国ボヘミア山塊・スロバキア共和国・九州熊本県肥後変成帯)での野外調査を行い、採取した研究試料の分析・解析を行った。昨年度は約6ヶ月間イギリス・エジンバラ大学のHarley教授の研究室に滞在し、ボヘミア山塊に産する粗粒ザクロ石を含む泥質片麻岩の各種の実験分析を行った。エジンバラ大学では、EPMAを用いて、粗粒ザクロ石泥質片麻岩中のモナザイトの年代測定を行った。さらに千葉大学において同様のEPMA分析を開始し、粗粒ザクロ石泥質片麻岩の高圧条件時は337.2±4.2Ma、高温中圧条件時は3365±5.1Ma、高温低圧時は334.9±3.9Maの年代値が得られた。この成果から、本岩体は高圧条件にまで沈み込んだ後、急速に上昇をしていたことが示唆される。また、粗粒ザクロ石泥質片麻岩中の粗粒GrtのPに乏しいコアおよび、Pに富むリム中には、廣井ほか(2011)で報告されているものと同様の、球晶状~グラノフィリック状組織を有する、珪長質な"火山岩様包有物"が見出された。このことから、高圧条件時でも部分溶融に伴うメルトが形成されていたと考えられる。以上のことから、本岩体は、バリスカン造山運動時に、高圧条件から低圧条件までの等温減圧と、その後"火山岩様包有物"に再結晶・粗粒化の時間的猶予を与えないほどの急速冷却過程が一連の事象として急速に展開したと考えられる。この"火山岩様包有物"の発見は、大きな過冷却度の環境下で生成されたことを示唆するが、固結後、なぜ粗粒の結晶粒に再結晶しなかったのか等、不明の点も少なくない。しかし、それらは高温・超高温広域変成岩の部分融解現象ならびに流動、移動、混合、上昇、冷却等の諸過程の解明に新しい手掛かりとなるものである。 日本鉱物科学会2012年年会・総会(京都大会)においては、これまでの研究成果を総括し、発表を行った。さらに、同大会期間内に開催された鉱物科学若手の会(YMO)ショートコースにて、講演を行った。
|
Research Products
(7 results)