2011 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙の大規模構造を用いた暗黒エネルギー及びインフレーションの研究
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10J00181
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西道 啓博 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | 暗黒エネルギー / インフレーション / 宇宙の大規模構造 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
高解像度シミュレーションから、銀河・銀河団サイズの暗黒物質ハローを同定し、これらが赤方偏移歪みを受けた場合に見かけの分布がどのようになるか調査した。ハローのパワースペクトルを観測者の視線方向と垂直方向の2次元上にプロットすると、これまで広く利用されてきた大スケールのKaiser効果と小スケールのFinger of God効果を合わせた解析的公式では分布を全く再現できないことを初めて明らかにした。一方、昨年度、暗黒物質の分布に対して我々が導出した、Taruya, Nishimichi & Saito (2011)による公式には、これら2つの効果に分類できない新しい寄与が存在する。シミュレーションを用いることで、この効果はハローのバイアスの強さの2乗に比例して増幅することを示した。この効果を適切に取り入れることで、シミュレーションから測定した2次元パワースペクトルは赤方偏移0.35において波数0.2h/Mpcまで誤差2パーセント以内で説明できた。将来の観測計画を想定した場合、補正項を適切に取り扱わないと、構造の線形成長率パラメタf(z)を平均で約5パーセント程度過小評価してしまう。次に、通常はガウス統計に従うものと仮定されている宇宙の原始揺らぎが非ガウス性を持つ場合にハローのバイアスがどのように変更を受けるかを調べた。昨年度の、2次局所型非ガウス揺らぎを拡張し、任意の次数の結合を持ち、また、複数の統計的に独立な成分が原始揺らぎに寄与する場合について解析的にハローバイアスの公式を導出した。この結果、「原始揺らぎは単一成分か、複数か?」、「非ガウス性は最低次(2次)の結合由来、より高次か?」という2つの重要な問題に答えるための、新しい整合性関係を明らかにした。これらの関係は観測量のみから構成され、Euclidなどの次世代観測から実際にテストすることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、昨年度の2次の原始非ガウス性の研究を拡張して3次の効果を取り入れた解析を行う予定であった。実際には、一般の次数の場合を含み、かつ、原始揺らぎに複数の成分がある場合の一般解を見つけることに成功したため、原始揺らぎの性質が近傍宇宙の大規模構造に与える影響についてより深い考察に成功し、予期していなかった新しい観測的テストの提案につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに導いた解析的公式の適用限界と達成精度をテストするため、大規模な宇宙論的N体シミュレーションを行い、その結果と詳細な比較を行う。また、より現実的な観測データを念頭に置いたテストを行うため、light cone上でのシミュレーションアウトプットを作成し、模擬データを用いた解析を行う。また、シミュレーションの解像度の有限性を起源とした系統誤差を低減するための補正法を確立し、現在の約1%レベルの精度をサブパーセントレベルまで引き上げたい。
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Research Products
(8 results)