2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00221
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長村 祥知 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 承久の乱 / 中世前期政治史 / 古文書学 / 後鳥羽院 / 武士論 / 東国武士 / 在京武士 / 在京継続 |
Research Abstract |
2010年度は、承久の乱、および治承・寿永内乱期の在京武士についての成果を公表した。 承久の乱に関して、(1)「承久三年五月十五日付の院宣と官宣旨」(『日本歴史』744)では、管見に入った後鳥羽発給論旨・院宣の収集による様式的検討と、藤原定家本『公卿補任』や『玉蘂』等を用いた文書発給手続の復元により、慈光寺本『承久記』所引「後鳥羽上皇院宣」が実際に発給されたこと、その奉者である葉室光親が、伝奏の立場で「官宣旨(右弁官下文)」発給の根幹にも位置したことを解明した。そして、承久京方張本公卿および文治元年の頼朝追討「宣旨」発給関係者の処罰との対比から、葉室光親が院宣と官宣旨の双方の発給に関わったために死罪という厳罰に処されたことを論じた。 (2)「承久の乱における一族の分裂と同心」(『鎌倉』110)では、戦前の研究で注目されていた承久の乱時の一族分裂の具体例を収集し、一族同心の京方武士と対比することで、承久の乱時の一族分裂や一族同心の規定的要因が、一族内分業という武士の存在形態、および上級権力による強力な軍事動員と考えられることを論じた。そして、如上の二種の京方武士の一族に対する鎌倉幕府の姿勢が『御成敗式目』十七条に窺えることを論じた。また従来研究が少なかった承久鎌倉方武士の基礎的な諸点を考察し、(3)「承久鎌倉方武士小考」(歴史学研究会日本中世史部会例会)を報告した。 治承・寿永内乱期の在京武士に関しては、(4)「在京を継続した東国武士」(高橋修編『実像の中世武士団』)で、平時以上に在国しての所領保全が重要となる治承・寿永内乱期にあっても、特定の政治勢力に属すことを目的とせず在京を継続して、平家・木曾義仲・源義経と主をかえた東国武士が存在したことを明らかにし、京でともに主をかえた諸国の武士と縁を結んでいたこと等を指摘した。
|
Research Products
(5 results)