2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00221
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長村 祥知 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 木曾義仲 / 在京武士 / 畿内近国 / 源行家 / 『源平盛衰記』 / 治承・寿永内乱 / 院権力 / 東国武士 |
Research Abstract |
2011年度は、治承・寿永内乱期の在京武士や畿内近国、『源平盛衰記』についての成果を公表した。 (1)論文「源行家の軌跡」では、源行家が、当該期の一般的・大多数の武士とは異なり、高い交渉力を有して工作員的活動を展開していた様子を解明した。 (2)論文「木曾義仲の畿内近国支配と王朝権威」では、木曾義仲の在京-畿内近国政権構想とその限界を考察した。従来は王朝権威に無知な反権威的人物と解されてきたが、義仲は王朝権威の積極的利用という志向で一貫していた。れにもかかわらず貴族社会上層部が義仲との提携を拒絶したのは、義仲が在京武力の中枢となり畿内近国の在地領主が磨下に参ずる対象となった反面、権門の存立基盤たる畿内近国の土着在地領主による押領を止められなかったためであることを解明した。義仲が直面した矛盾の前提となる当該期の京・畿内近国の権力構造こそが、在京の武家政権を成立させなかった重要な前提と考えられる。 (3)論文「治承・寿永内乱期の在京武士」では内乱期の政治過程に果たした在京武士の動向を総体的に考察した。平家・木曾義仲・源義経という在京武力中枢の興亡に殉ずることなく在京を継続した武士の動向が当該期の政治過程にきわめて大きな意義を有したこと、京武者は院の意向に従う傾向が強いが、在京中の東国武士は院の軍令を相対化する傾向が比較的強いことを解明した。 (4)論文「木曾義仲の上洛と『源平盛衰記』」では、寿永二年(1183)の反平家軍の連携の内実と、『源平盛衰記』の史料的特質を考察した。近江の南北間陸路の幹線道は湖西路だったが、義仲は意図的に時間をかけて湖東路から上洛した。その目的は、山門への対処に加えて、近江以東の清和源氏諸流との連携・合流、源行家との同日入京にあった。『源平盛衰記』は何らかの資料に依拠して地名を詳細に把握せんとする志向が顕著であり、特に京--近江-越前の道の記述は比叡山の資料を用いたと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、木曾義仲を中心とする治承・寿永内乱期の在京武士についての研究を進め、その成果を公表したから。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、在京武力と公武関係に関わる様々な論点についての研究を進める予定である。
|
Research Products
(6 results)