2010 Fiscal Year Annual Research Report
気孔の開口を駆動する細胞膜プロトンポンプの活性制御機構の解明
Project/Area Number |
10J00254
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井上 晋一郎 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 気孔 / 細胞膜プロトンポンプ / 青色光 / フォトトロピン / リン酸化反応 |
Research Abstract |
植物の表皮に存在する気孔は、植物と大気間のガス交換を調節する。気孔は光に応答して開口し、これは気孔孔辺細胞の細胞膜に存在するプロトンポンプの働きに依存する。プロトンポンプである細胞膜H^+-ATPaseは、C末端のリン酸化を介して活性化されることが明らかとなっているが、このリン酸化を調節する活性制御因子は不明である。この未知の活性制御因子を同定するため、今年度では、主に遺伝学的アプローチにより実験を進めた。EMSで変異処理したシロイヌナズナの変異株約16万株を用いて三種の変異株スクリーニングを行い、細胞膜H^+-ATPase活性が野生株に比べて低下、または増加した変異株を多数単離した。現在、次世代を用いた再現性の確認と、有力な変異株の表現型解析を進めている。有力変異株の中で、根において細胞膜H^+-ATPase活性が低下し、酸性条件下でのみ根の伸長が著しく阻害されるE8-4株について特に解析を進め、原因遺伝子の同定に成功した。この変異株では植物ホルモンのオーキシンの蓄積が根端で低下しており、これがH^+-ATPaseのリン酸化レベルと活性の低下の原因となっていた。この結果は、オーキシンがリン酸化を介してH^+-ATPaseの活性を正に制御することを示している。この内容は、現在学術雑誌への投稿準備を進めている。また、この他にも、幼齢期でのみH^+-ATPaseのリン酸化が損なわれ、活性が低下し、幼い実生の形態が変化している変異株や、光に応答した気孔開口を示さない変異株も数株得られており、詳しい表現型解析と原因遺伝子の同定を進めている。これらの変異株における、H^+-ATPase活性と結びついた多様な表現型は、植物の様々な組織・器官におけるH^+-ATPaseの重要性と、どのように組織特異的にH^+-ATPase活性が制御されているのか、などの新たな知見を提供できると考えられる。
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Research Products
(4 results)