2010 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の保有する共生器官-菌細胞塊の発生過程および特異的に発現する遺伝子群の解析
Project/Area Number |
10J00282
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松浦 優 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 共生器官 / 菌細胞塊 / 共生細菌 / ヒメナガカメムシ / laccase2 / RNAi / 進化 |
Research Abstract |
本研究は、昆虫が有する共生器官である菌細胞塊の形成・維持に関わる遺伝的・発生学的基盤を解明するため、菌細胞塊に特異的に発現する遺伝子群を網羅的に解析し、それらの機能を同定するとともに、菌細胞塊の発生過程を詳細に解析することにより、菌細胞塊の進化的起源に迫ることを目指す。初年度は主にヒメナガカメムシ類を対象として飼育系統の維持、共生細菌の同定と感染局在の解析、そして遺伝子取得・解析法の確立に取り組んだ。まず、ヒメナガカメムシ類を各地から採集し、人工気象器内で植物種子を餌として飼育、維持することに成功した。ついで菌細胞塊から16S rRNA遺伝子を取得し、共生細菌叢の解析を行ったところ、主に1種の共生細菌を発見した。分子系統学的解析によりこの共生細菌は腸内細菌科に属しており、wFISH法・透過電顕観察によって菌細胞塊と卵巣細胞内に感染していることが確認された。さらに抗生物質処理により、共生細菌が除去されると宿主卵は正常に艀化しないことから、宿主にとって共生細菌は必須であることがわかった。ここまでの成果はヒメナガカメムシ類の共生系に関する重要な基礎的情報である。次に、菌細胞塊に発現する遺伝子の網羅的取得のためヒメナガカメムシ類の菌細胞塊と腸管からRNAを抽出し、SMART法によりcDNAライブラリを作製した。一方で、ヒメナガカメムシ類を用いて、遺伝子の機能解析のためのRNAi法を検討した。昆虫のクチクラ着色に必要なlaccase2遺伝子をクローニングし、その配列を標的にしてdsRNAを注射すると、羽化後に着色が阻害されRNAiの効果を確認できた。実験条件の最適化を行い、母性効果があることも確認した。これによって、菌細胞塊に発現する遺伝子の機能解析が可能となった。菌細胞塊の発生経路については、卵から卵殻を除去し、胚発生の過程と菌細胞塊の発達に着目して観察した。本年度達成されたこれらの成果および取り組みは、今後の研究においての発展性を十分に保証している。
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