2012 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体の新規non-genomic機構の解明と創薬への応用
Project/Area Number |
10J00300
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 一明 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD)
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Keywords | ビタミンD受容体 / 腎臓線維化 / 化合物スクリーニング |
Research Abstract |
申請者はリガンドが豊富に存在するビタミンD受容体(VDR)を用いて、VDRのgenomic活性とnon-genomic活性を測定したところ、種々のリガンドごとに両活性が相関しないことを見い出している。このことは、VDRを含む核内受容体のgenomic/non-genomic経路が特定のリガンドで分離できることを示している。核内受容体のgenomic機構(転写活性化機構)とnon-genomic機構(TGF-βシグナル抑制機構)を別々に制御できるリガンドを用いることで、これまで明らかになっていないnon-genomic機構の分子メカニズムを解明することができる。また、新たなタイプの治療薬の開発につながると考えられる。前年度までに、VDRによるTGF-βシグナル抑制機構の分子基盤を明らかにすることができた。さらに、VDRのgenomic活性を持たず、non-genomic活性を持つ化合物を得るために、VDRの候補化合物ライブラリースクリーニングを実施し、数種のヒット化合物を得ることができた。同時にマウスを用いた腎臓線維化抑制効果の評価系を確立し、動物レベルの評価を行う準備も完了した。 本年度ではその評価系を用いて、得られたVDRの化合物のin vivoにおける腎臓線維化に対する効果を調べた。5週齢雄マウスの片側腎臓尿管を結紮し、化合物を連日投与(60μg/kg/day)後、腎臓組織の切片を作製し、マッソントリクローム染色を行い、顕微鏡下で線維化レベルを組織学的に解析した。その結果、活性型ビタミンD3投与群と同様に化合物投与群でも確かに線維化レベルは低下していた。腎臓における線維化関連遺伝子のmRNA量とタンパク質量を測定したところ、PAI-1、I型コラーゲン、α-smooth muscle actinの発現量と蓄積量も低下していた。一方で血中のカルシウムイオン濃度を測定したところ、活性型ビタミンD3投与群では上昇しるのに対し、化合物投与群ではほぼ上昇していなかった。以上の結果より、VDRのgenomic活性を持たず、non-genomic活性を持つ化合物を同定し、その化合物が高カルシウム血漿を誘導することなく腎臓の線維化を抑制することを確認することができた。
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Research Products
(1 results)