2010 Fiscal Year Annual Research Report
地磁気逆転期の高精度気候復元-地球磁場が気候に与える影響の解明-
Project/Area Number |
10J00341
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北場 育子 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 寒冷化 / 地磁気逆転 / 気候変化 / 海水準変動 / Mid-Pleistocene Transition / シキシマブナ / 微化石分析 / 大阪湾 |
Research Abstract |
気候変動の要因を明らかにすることは、気候学上の重要な課題である。本研究では、地球磁場が気候に与える影響の解明を目指して次の研究を行った。1.マツヤマ-ブリュンヌ地磁気逆転期における大阪湾周辺の気候を復元し、地磁気逆転期には海水準の上昇に反して寒冷化が起こっていたこと、この寒冷化は気候変化の主因と考えられている日射量変動では説明できず、地磁気逆転に伴う地磁気の減少によって引き起こされた可能性が高いことを見いだした。そして、地磁気減少に伴う宇宙線量の増加が引き起こしたと考えられる気温低下と、花粉化石記録に基づく気温低下の推定値が一致することを確認した。なお、ジャワで採取した同時代の堆積物の分析も行ったが、花粉化石は産出しなかった。2.大阪湾堆積物の古地磁気測定と珪藻、硫黄、花粉の分析を行い、ハラミヨサブクロン開始期の古地磁気強度と海水準、気候変化を復元し、マツヤマ-ブリュンヌ地磁気逆転期と同様の寒冷化が起こっていたことを明らかにした。3.地磁気逆転期の気候の寒冷化が大幅な地磁気減少強度に起因することを確かめるため、地磁気逆転が起こっていないステージ21の気候と海水準を復元し、地磁気逆転期の気候と比較した。ステージ21では高海面期には温暖で、地磁気強度が減少しなければ気候変化の主因は日射量変動で説明できることがわかった。 ステージ21は、Mid-Pleistocene Transitionと呼ばれる気候周期の変換期に位置しているが、ステージ21(約80万年前)には、卓越周期の変換がほぼ完了していたことも明らかになった。4.研究対象である時代のブナ属花粉の一部が絶滅種由来であるため、花粉化石に基づく当時の気候の推定・定量化は困難であるとされてきた。そこで、絶滅種シキシマブナ産出層の古植生と古気候を推定し、シキシマブナが現生種と同じ気候条件下でも生育可能であった可能性が高いことを示した。研究成果の一部は、国内外の学会で発表し、論文も公表した。
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Research Products
(8 results)