2010 Fiscal Year Annual Research Report
微細加工を用いた接合によるスピン三重項奇パリティ超伝導の研究
Project/Area Number |
10J00355
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 壮智 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピン三重項超伝導 / 超伝導近接効果 / ジョセフソン効果 / トポロジー |
Research Abstract |
本研究の主要物質であるSr_2RuO_4は超伝導転移温度が1.5Kのスピン三重項超伝導体であることが有力視されており、これまでの研究からその超伝導波動関数の軌道はpx+ipyの対称性で表されるカイラルP波であると考えられている。一方Sr_2RuO_4とRuが共晶になったSr_2RuO_4-Ru共晶体では、Ru近傍のSr_2RuO_4でその超伝導転移温度が約3Kに上昇することが知られているが、その超伝導対称性は1.5K以下とは異なり、ノンカイラルの超伝導であることがわかっている。このノンカイラルの超伝導が、温度の低下によってカイラルへと変化する際、どのように変化するのかはこれまでわかっていなかった。本研究ではSr_2RuO_4-Ru共晶体とs波超伝導体であるPbを用いて、Pb/Ru/Sr_2RuO_4超伝導接合を作成し、その導電特性の温度依存性を調べた。その結果、この接合の臨界電流が1.5Kで急激に抑制されることがわかった。この振る舞いは1.5Kになると同時に、Sr_2RuO_4の超伝導波動関数のRu界面方向の位相が突如変化したことを示しており、この超伝導接合の形状から、位相の空間的なトポロジーが変化したと考えると自然に理解できる。これはSr_2RuO_4-Ruの超伝導に位相のトポロジーの転移があることを実験的に示した初めての成果である。またこれはSr_2RuO_4の超伝導だけでなく、界面のような並進対称性が破れる系において、境界条件が超伝導対称性に与える影響を示した重要な成果である。
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