2010 Fiscal Year Annual Research Report
寿命制御におけるアルギニンメチル化-リン酸化クロスーク機能の解明
Project/Area Number |
10J00386
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高橋 悠太 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アルギニンメチル化 / 修飾間クロストーク |
Research Abstract |
転写因子DAF-16は、線虫における重要な寿命制御因子であり、DAF-16による転写活性化は線虫の寿命延長を引き起こす。また、DAF-16はインスリンシグナル伝達系路の下流キナーゼAktからリン酸化を受けることにより、その転写活性化能が抑制される。申請者は、アルギニンメチル化修飾がDAF-16のリン酸化を阻害し、機能を亢進させるという仮説のもと、研究を遂行している。 まず、申請者は線虫個体内におけるDAF-16のアルギニンメチル化とAktリン酸化の修飾間クロストークを「寿命」を指標にした遺伝学的解析により検証した。結果を下記に示す。 (1)アルギニンメチル化を触媒する酵素PRMT-1の欠損変異体の寿命が野生型に比べ、有意に短かった。 (2)変異体にPRMT-1を戻したレスキュー実験により、PRMT-1が酵素活性依存的に寿命を制御することが明らかになった。 (3)PRMT-1欠損はDAF-16変異体の寿命を短縮させないことから、PRMT-1はDAF-16を介して寿命を制御していることが見いだされた。 これらの結果は、アルギニンメチル化とAktリン酸化の修飾間クロストークが寿命を制御するという仮説を強く支持するものであった。 次に、申請者が作製した抗リン酸化DAF-16抗体を用いて、線虫体内のDAF-16のリン酸化状態を検討した。その結果、prmt-1欠損変異体において、野生型に比べDAF-16のリン酸化が亢進していることが明らかになり、PRMT-1がDAF-16のリン酸化を阻害することが示唆された。 これまでの結果から、アルギニンメチル化とAktリン酸化の修飾間クロストークの生理的意義の一つが、寿命の制御であることが強く示唆されている。
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