2011 Fiscal Year Annual Research Report
大強度ビームを用いたニュートリノ振動実験「T2K」での電子ニュートリノ探索
Project/Area Number |
10J00423
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 明 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 素粒子物理 / ニュートリノ / 実験 / 測定器 |
Research Abstract |
未だ発見されていないT2K実験での電子ニュートリノ出現モードを精度よく探索するために、現状の課題として、スーパーカミオカンデでの電子ニュートリノ事象が少ないことと、J-PARCにおけるニュートリノ計測を元にしたスーパーカミオカンデでのニュートリノ観測数の予測精度が悪いことが挙げられる。この観測数の予測は、J-PARCでのニュートリノ観測数を元に、シミュレーションを用いて行われる。J-PARCでのニュートリノ観測の測定精度が悪いことと、シミュレーションの予測精度が悪いことがこの予測精度を悪くしている。これらに対して、私は今年度以下のことに取り組み、成果を出した。ニュートリノビームモニターの現場責任者として生成されたニュートリノが常に正しい方向に向いていることを保証することで、スーパーカミオカンデでのニュートリノ観測数を効率良く増やすことに貢献した。シミュレーションの予測精度を悪くしている一番の原因として、ハドロン生成に関する不定性がある。他にも、実際に使用する陽子ビームの形状のシミュレーションとの違い、実際のニュートリノビームのビーム軸からのズレ、からくる不定性などがある。これらに対して、実際の測定データを元にシミュレーションを最適化することで、不定性を従来の20%程度から10%程度まで減らし、現時点では許容できる精度を確保した。J-PARCでのニュートリノ観測数の測定精度向上のために、スーパーカミオカンデと同じ仕組みの、光電子増倍管を用いた小型水タンク検出装置の開発・製作・設置を行った。2011年の東関東大震災のため、装置製作・設置が半年ほど遅れたが、同年12月には設置を完了させ、現在はニュートリノ観測を行っている。測定したデータを元に、ニュートリノ観測数の測定精度実機を評価し、最終的にスーパーカミオカンデでのニュートリノ予測観測数の精度がどこまで抑えられるかを検証する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的達成のための主な課題として挙げた、シミュレーション最適化によるスーパーカミオカンデでのニュートリノ観測の予測精度の向上は、おおむね計画通り達成できた。また、申請書には記載していなかったが、目的達成に重要だと判断して行った新検出器開発も終了し、現在は運用中でその性能評価を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
スーパーカミオカンデでのニュートリノ観測数もある程度まで増え、その予測精度も当初の予定の水準まで達成できたため、今後は測定したニュートリノのデータを解析することで、電子ニュートリノ探索を行う。また、新検出器の性能評価がまだのため、それも並行して行い、さらなる予測精度の向上を行い、電子ニュートリノ探索の精度を向上させる。
|
Research Products
(2 results)