2011 Fiscal Year Annual Research Report
T2K実験における電子ニュートリノ出現モードの発見
Project/Area Number |
10J00437
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家城 佳 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ振動 |
Research Abstract |
私の研究目的は、T2K実験において電子ニュートリノ出現モードの発見を行うことである。2011年6月、T2K実験は初の解析結果を公表し、電子ニュートリノ出現モードの徴候を観測したことを明らかにした。この結果は有限の振動角θ13を示唆する世界で初めての研究成果であり、物理学業界に大きな影響を与えた。今回の解析に使用したデータ量は当初の目標の2%にすぎず、現在は更にビーム強度を増しながらデータ取得を進め、より高精度での振動角θ13の測定を目指して研究を行っている。また一方、2012年3月には中国のDaya Bay実験、次いで4月に韓国のRENO実験が原子炉を使用したニュートリノ振動結果を発表した。これらの結果はT2K実験によって示唆された比較的大きなθ13の値を裏付けるものであり、θ13が有限の値を持つことが確実となった。今後は、残された最後の振動パラメータであるCP位相δの値の解明、及びθ23の縮退問題の解明を行うため、加速器実験と原子炉実験の両面でより高精度な振動測定を達成する必要がある。そのため、私はまず前置検出器FGDにおける粒子飛跡再構成方法の大幅な改良を行った。この改良により特に飛跡数が2以上のときの飛跡再構成効率が15%も向上し、ニュートリノ反応の測定精度が大幅に改善された。また、現在の振動解析において最大の系統誤差要因となっているのは、ν反応に伴って生成されるπ中間子の二次的反応の不定性である。これを改善するため、私はシンチレーションファイバーを使用した新型の検出器を開発し、TRIUMF研究所(カナダ)のπビームラインにおいて荷電π中間子反応測定実験を行った。この測定結果は2012年6月のニュートリノ国際会議で発表予定であるが、本結果によって過去最高精度でνμ→νe振動を測定できることが期待されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
T2K実験は既に電子ニュートリノ出現モードの徴候観測を発表しており、これは私の研究目標が既にほぼ達成されたことを意味する。しかし、この結果は当初予定していたデータ統計量のたった2%を用いて行われたものであり、目標としていた精度にはまだ達成していない。上記に記述したとおり、今後は残された振動パラメータδとθ23の縮退問題解決のためにさらなる解析精度の向上を行い、ニュートリノ振動の完全解明を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュートリノ振動の測定精度向上には、まず何よりもデータ統計を増やす必要がある。私は今後も前置検出器の安定的な運用・モニタリングを行い、着実にデータ統計を獲得する。また、先述したπ中間子の反応不定性に起因する系統誤差を改善するため、TRIUMFで行われたπビーム測定の結果をまとめ、その結果をT2K実験に適用した新しい振動解析を行う。
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Research Products
(4 results)