2010 Fiscal Year Annual Research Report
環状ニッケル錯体を鍵とするアルデヒドへの炭素-水素結合付加反応
Project/Area Number |
10J00523
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
星本 陽一 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニッケル / ティッシェンコ反応 / 交差ティッシェンコ反応 / エステル / アルデヒド |
Research Abstract |
本研究は、環化ニッケル錯体を鍵中間体とするアルデヒドの新規分子変換法の開発を目的としている。本年度の研究成果として、ティッシェンコ反応と呼ばれるアルデヒドの触媒的ホモ二量化反応によるエステル合成法を、その発見から120年間で初めて交差反応へと展開することに成功した。交差ティッシェンコ反応は異なる二つのアルデヒドから選択的に一種類のエステルを合成する反応であり、これまで、数多くの研究チームがその開発を試みてきたものの成功には至らなかった。従来の触媒を用いた反応系においては、触媒と二分子のアルデヒドは一分子ずつ反応し、エステル骨格を段階的に形成することが知られていた。これに対し申請者は、ニッケルが二分子のアルデヒドと同時に反応し環状ニッケル錯体を形成し、続く分子変換により一気にエステル骨格を形成することが出来る点に着目して反応設計を行った。 反応条件を精査した結果、ニッケル触媒存在下、脂肪族アルデヒドと芳香族アルデヒドを当量ずつ混合するのみで生成物選択的に単一の交差エステルが得られることを見いだした。この反応は原子変換効率100%であり、廃棄物を一切出さず、反応は中性条件下で行えるため環境に対する負荷も少ない。また、不活性ガス雰囲気下を必要とするものの、実験手法は非常に簡便である。特に単離方法は従来のエステル合成法と比べ手間を必要とせず、反応終了後蒸留するのみで目的物を得ることが出来る。 本研究の成果はティッシェンコ反応をより汎用性の高いものへと発展させた。これにより、続く応用研究を促し、多大な波及効果を学術的・産業的に及ぼすと期待できる。
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Research Products
(3 results)