2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00529
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
布谷 直義 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 固体電解質 / 4価イオン伝導体 / ナシコン型構造 |
Research Abstract |
本研究では、固体中を伝導できる4価イオンの種類とそのイオン伝導性を明らかにすることを目指している。 4価イオン伝導種としては、4価の価数で安定、かつ電気陰性度が小さいジルコニウムイオン(1.33)やハフニウムイオン(1.3)が適しており、他の4価イオンは伝導種として不適当とされてきた。しかし、これまでの研究により、価数変化による電子伝導性発現の可能性がある4価のチタンイオン、および電気陰性度が高いことから結合力の強い共有結合性が支配的となるゲルマニウムイオン(電気陰性度 : 2.01)でも、構造を制御することで固体中を伝導できることを実証している。 そこで平成23年度は、価数変化しやすく、かつ電気陰性度が高いスズイオン(1.96)でも結晶構造を適切に設計することにより固体中を伝導できると考え、4価のスズイオンを伝導種とする固体電解質の開発を目指した。母体としてこれまでに報告されている4価イオン伝導体(MNb(PO_4)_3(M=Zr, Hf, Ti, Ge))と同様にナシコン型構造を有するSnNb(PO_4)_3を選択し、そのNb^<5+>イオンサイトにより高価数カチオンであるW^<6+>イオンを部分置換させることにより、Sn^<4+>イオンとO^<2->イオンとの静電的相互作用を低減させたSn(Nb_<1-x>W_x)_<5/(5+x)>(PO_4)_3を合成した。その結果、Sn(Nb_<0.65>W_<035>)_<5/5.35>(PO_4)_3において、酸素分圧(Po_2)が10^<-13>Pa未満の強い還元雰囲気下ではSn^<4+>イオンの還元による電子伝導性が確認されたが、10^<-13>Pa以上の領域ではイオン伝導性が支配的であり、また空気(Po_2=10^4Pa)雰囲気下におけるイオン輸率は99%以上であった。さらに、直流電気分解法により伝導イオン種を調べたところ、スズイオンのみが伝導していたことから、Sn(Nb_<0.65>W_<0.35>)_<5/5.35>(PO_4)_3の伝導種はスズイオンであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで、価数変化しやすく、かつ共有結合性が強いスズイオンは固体電解質の伝導種としては不適当とされてきたが、構造を適切に制御することにより、固体中を伝導できることを実証することができた。この結果は、今後の実用レベルのイオン伝導性を有する4価イオン伝導体の設計に対する大きな指針となることから、「(1)当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究により、固体中の伝導は不可能とされていた4価のスズイオンを伝導種とする固体電解質の開発に成功した。そこで、スズイオン伝導体に加えて、これまでに報告されている4価イオン伝導体(ジルコニウムイオン、ハフニウムイオン、チタンイオン、ゲルマニウムイオン)に関して、その詳細な結晶構造や結合様式を調べることで、固体中における4価イオンの伝導機構を解明する。さらに、その知見を材料設計へとフィードバックすることにより、実用レベルの高いイオン伝導性を有する新規な4価イオン伝導体を創製する。
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Research Products
(7 results)