2011 Fiscal Year Annual Research Report
大振幅ゴールドストーンボソン励起による非平衡相転移の研究
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10J00534
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
篠北 啓介 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
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Keywords | テラヘルツ / 非線形分光 / 高強度テラヘルツ光 |
Research Abstract |
自発的対称性の破れを伴った相転移を起こす物質では、フォノンやマクノンのような、系の対称性の破れに関わるGoldstoneボソンが発現する。本課題は、THz領域に存在するGoldstoneホソンの直接励起を利用して非平衡相転移の物理を明らかにすることを目標としている。採用1年目は励起光源の開発に費やし、電場強度にしてIMV/cm超のTHz光源の開発を行った。励起光源の評価のための試料として半導体GaAsを用いた実験を行い、THzパルスで半導体中に励起状態を生成することができ近赤外領域の発光を観測することができた。一方、相転移物質では発光分光法を用いることができない。そこで当該年度は、新たにプローブのための光源の開発をおこなった。また、採択1年目の結果について解析を行い論文にまとめた。 測定光源として自己位相変調による白色パルスを採用した。これによって、ある一点の周波数での時間変化だけでなく、スペクトルの時間発展を測定することができて、THzパルスの照射による変化を解析および理解する上で大きな利点となる。さらにCCDと分光器を用いて1kHzでポンププローブ系を構築し高感度に小さな変化まで測定できるようにした。この白色パルスを用いて、先の半導体GaAsに対してTHzパルス励起のポンププローブ分光を行った。数百psに及ぶ非常に長い吸収変化が観測された。またスペクトルの変化が、光励起によるスペクトル変化とよく一致した。このことからキャリア増幅による吸収変化と同定することができ、THzパルスによる励起でキャリアが実励起されていることが明らかになった。これは白色を用いてスペクトル変化を一度に測定したことでわかったことである。このように、スペクトル変化をポンププローブ分光でもはっきりと測定することができるようになり、測定光源の開発は達成できたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であった1年目で開発した高強度THz光源を用いた励起での光学応答を測定するためのプローブ光源の開発を達成した。プローブ光源の評価に半導体を用いた実験を行い、高感度に吸収変化が測定することが確認できた。さらに、1年目の実験結果について解析を行い論文にまとめた。以上のことから、当初の計画以上の進展であると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
採択1年目、2年目で開発した励起光源、プローブ光源を用いて相転移物質のゴールドストーンボソン励起による相転移の探索を行う。有機導体やマルチフェロイクスなど多くの物質を用いた実験を行い、系統的な解析を行う。また、励起光源の強度が弱くて相転移が起こせない場合は、Thz光源のさらなる高強度化を目指す。それには、結晶を冷却させフォノンの吸収を高周波側にシフトさせたり、結晶中に構造を書き込み、発生したTHzパルスを効率的に自由空間に取り出すことで達成する。
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Research Products
(8 results)