Research Abstract |
本研究では,"more than more"の概念の下,フェリチンと呼ばれるタンパク質を利用したナノバイオプロセスを使い,金ナノ粒子を電子デバイス上に集積した新奇光電子デバイスの創成を目指している.本年度では,金ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の吸収スペクトルを電子デバイス上で直接電流として検出する構造の提案とその実証を目指した.第一の提案として,金ナノ粒子のLSPRとチャネル電流の相互作用に期待し,バックゲートトランジスタ(BGT)のチャネル上に金ナノ粒子を並べたデバイスを試作した.デバイスのプラットフォームとして作製したSOI(Si-on-insulator)バックゲートトランジスタ(BGT)からは,良好なトランジスタ動作を確認することができた.しかし,ナノバイオプロセスを用い,この作製したBGTのチャネル上に金ナノ粒子を並べ,単色波長光によるチャネル電流の変調の観測を試みたが,LSPRスペクトルのような電流スペクトルは得られなかった.その原因として,チャネルのSOI層自体も光を吸収していることが挙げられた.そこで,その対策として,加熱条件次第で透明半導体になり得るNbドープTiO_2(NB-TiO_2)をチャネル上に用いた.また,金ナノ粒子周囲の電場増強による電流への効果より,金自体に直接電流を流した方がLSPRを観測しやすいと考え,電流を流す電極に金を,チャネル層にTiO_2を用いたAu/TiO_2ショットキーダイオードを作製した.Nb-TiO_2層が半導体的性質を示す加熱条件は,400℃・1時間であった.半導体的性質を示すNb-TiO_2層上に500×500um^2四方のAu電極(100nm)を形成したデバイスを用い,単色波長光に対する光電流を波長に対してプロットしたところ,波長620nm付近にピークを持つ電流スペクトルが観察できた.この結果は,このデバイス構造によりLSPRを検出できたことを意味しており,本年度の目標は達成できたと言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初期待していたバックゲートトランジスタによる局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の検出は,いくつかの課題に直面し,上手く果たせなかった.しかし,そこから得た教訓を生かし,透明半導体のTiO_2とAuのショットキーダイオードによるLSPR検出に可能性を見出すことができたので,自己点検による評価は(2)とした.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究実績で述べたように,作製したAu/TiO_2ダイオードからは波長620nm付近にピークがある電流スペクトルが得られた。しかしながら,Au電極の大きさは局在表面プラズモン共鳴が起きる程小さく,620nm付近にピークが現れたメカニズムについてはまだ明らかになっていない.そこで今後,この電流スペクトルの起源を探るとともに,Au電極構造やNb-TiO_2層の加熱条件の最適化等を行い,スペクトルのピーク位置の調整を目指す必要がある.また,金ナノ粒子との複合化の検討も行っていく.
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