2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00683
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井尻 悠一 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 低分子量Gタンパク質 / Ras / シグナル伝達 / 立体構造 / 遷移 / X線結晶構造解析 / ^<31>P-NMR |
Research Abstract |
近年の^<31>P-核磁気共鳴(NMR)による解析から、一般的に活性型と考えられてきたGTP結合型Rasには、エフェクターとの結合に有利なstate2とエフェクターとの結合に不利なstate1が相互変換(遷移)可能な状態で存在することが明らかとなっている。これはRasファミリー低分子量GTPase全般に見られる普遍的な性質であり、2種類のstateの占有比率は各GTPase間で大きく異なることが分かっているが、state遷移のメカニズムについては全く解明されていない。その原因として、H-Rasではstate1構造が、M-Rasではstate2構造が不明であるように、1種類のポリペプチドから2種類のstate構造が決定されたRasファミリー低分子量GTPaseが存在しないことが挙げられる。本研究では、H-Ras型アミノ酸置換を導入したM-Ras変異体、M-RasD41Eを作成し、1種類のRasポリペプチドに由来する2種類のstate構造の決定に成功した。詳細な分子内相互作用の解析の結果、state1構造では、switchI領域のN末端近傍のアミノ酸残基間での水素結合、並びに、switchII領域とα3ヘリックスの間の水素結合の多くが欠失していた。一方、state2構造ではこれら2種類の分子内相互作用により、2つのswitch領域とGTPの間の水素結合の形成が促進され、立体構造の安定性が保たれていた。以上の結果から、前述の分子内相互作用に起因する2つのswitch領域とGTPの間の水素結合がstate2構造の安定化、並びに、state2の占有比率の増加を引き起こすことが明らかになった。
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