2010 Fiscal Year Annual Research Report
マガキの新規なクモ糸様タンパク質の機能解析および制御
Project/Area Number |
10J00742
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 潤 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バイオミネラリゼーション / ポリアラニン / クモ糸様タンパク質 / 有機基質 / マガキ / 貝殻形成 / 炭酸カルシウム |
Research Abstract |
クモ糸タンパク質と類似するアミノ酸配列モチーフを持ち、マガキの貝殻形成を担うと考えられるタンパク質「Shelk」について、生物学的な機能解明を目指すにあたり、in vivoと、in vitroの両面から検証を試みている。 まず、生体内(in vivo)におけるShelkタンパク質の機能を調べるため、マガキに対しRNA干渉法(RNAi)を用いてshelk遺伝子をノックダウンし、貝殻形成への影響を確認した。マガキ幼生に対して遺伝子ノックダウンを行った結果、mRNAの発現量の減少、および生育阻害(致死)固体の大量発生、という結果が得られた。果たしてこれが、幼生初期における貝殻原型の形成阻害に伴う影響なのかを確認するべく、引き続き再現性の確認を行う予定である。また、新たに見つかったクモ糸様タンパク質Shelk2に関しては、in vitro実験系において貝殻の主成分である炭酸カルシウムの結晶形成に与える影響を調べ、さらに抗Shelk2抗体を作製する目的で、抗原となる組換えタンパク質の作製を試みた。しかし、β-シート構造を取りうるポリアラニン領域が大半を占めるShelk2の組換えタンパク質作製は困難を極め、現在までにそのN-末端部分配列に対象を制限して、組換え体の作製と精製が完了した。 さらに、マガキの近縁種であるイワガキ、シカメガキ、アメリカガキ等からも、shelk2の相同遺伝子と考えられる遺伝子配列を特定した。その一方で、ゲノミックサザンブロッティング法により、マガキや近縁種のshelk2様遺伝子を解析した結果、マルチジーンであることが新たに判明した。これにより、元となった遺伝子の特定が難しくなり、予定していた生物種間での遺伝子の進化的解析は事実上不可能であると判断し、これを中止することとした。遺伝子に代わり、アミノ酸配列での相同性比較を行うことを検討している。
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