2011 Fiscal Year Annual Research Report
マガキの新規なクモ糸様タンパク質の機能解析および制御
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10J00742
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 潤 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バイオミネラリゼーション / 有機基質 / ポリアラニン / マガキ / クモ糸様タンパク質 / 貝殻形成 / 炭酸カルシウム |
Research Abstract |
クモ糸タンパク質と類似するアミノ酸配列モチーフを持ち、マガキの貝殻形成を担うと考えられるタンパク質Shelkのうち、特にShelk2についての生物学的な機能解明を目指して、in vivoと、in vitroの両面から検証を試みた。 まず、生体内(in vivo)におけるShelk2タンパク質の機能を調べるため、マガキに対しRNA干渉法(RNAi)を用いてshelk2遺伝子をノックダウンし、貝殻形成への影響を確認した。マガキ幼生では、生育阻害(致死)固体の大量発生、という結果が前年に引き続き再現良く得られた。そこで、幼生での試験は諦め、マガキ成体の閉殻筋(貝柱)にdsRNAを注射することで遺伝子ノックダウンを行ったところ、貝殻再生部分の稜柱構造形成に異常が見られたため、引き続き再現性の確認を行う予定である。 さらに、生体外(in vitro)における機能を調べるため、濁度測定実験とSEM観察を行った。その結果、炭酸カルシウム結晶形成において、マガキShelk2由来ペプチドの、特にPYY配列が構造決定のカギとなりうることが示唆された。濁度測定時には、Shelk2由来のペプチドの多くは炭酸カルシウム微結晶そのものの形成を阻害したのに対して、SEM観察に用いた長時間の結晶化過程では、対照と比べて結晶の粒径が大きくなった。このことから、各ペプチドが結晶「核」として機能しているというよりも、むしろ結晶成長の過程において関与している可能性が大きいことが予想された。Shelk2由来の各ペプチド配列の組合せが、複雑な貝殻形状の形成に関与していると考えられ、今後のより詳細な解析で明らかにしたい。 前年までに、マガキの近縁種であるイワガキ、シカメガキ、アメリカガキ等から、shelk2の相同遺伝子を特定したが、詳細な解析の結果、Shelk2タンパク質には、(G/S)(G/N)S[A]nおよびG(R/Q)N[A]nという、特徴的な2種類のポリアラニンモチーフが存在し、さらにこれらのマガキ近縁種間においては、前述したモチーフ単位での挿入・欠失が起こっていることが、アミノ酸配列での相同性比較により明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の研究において軌道修正を行ったものの、そのほかの進捗は順調に推移している。 前年度までの研究成果は論文としてまとめて公開でき、また今年度の研究成果の一部も既に論文を投稿している。
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Strategy for Future Research Activity |
マガキの外套膜おより貝殻中における、Shelk2タンパク質の局在を確認するため、免疫化学的手法を用いた研究を引き続き行う。それにより得られた結果は、今年度の研究成果と共に、Shelk2の機能に関する論文にまとめる。
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