2011 Fiscal Year Annual Research Report
高品質シリサイド半導体のエピタキシャル成長とバンドエンジニアリングの検証
Project/Area Number |
10J00775
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野田 慶一 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄シリサイド / ひずみバンドエンジニアリング / シリコン系発光材料 |
Research Abstract |
本研究の対象としているベータ鉄シリサイドは、間接遷移型半導体であるが、ひずみ印加に伴い高効率発光を示す直接遷移型半導体へ変化する可能性が第一原理計算により示唆されている。本研究では、ひずみとバンド構造の相関について実験的検証を行ってきた。昨年度と今年度の研究により、成長条件・熱処理条件を変化させることによって格子変形を導入した場合、直接遷移エネルギーが減少することを明らかにした。本結果は理論計算で示された、格子変形と直接遷移エネルギーの相関を実証する初めての実験結果である。以上の結果を踏まえて、本年度は1)第一原理計算による直接遷移エネルギー減少の起源の推定、および2)直接遷移化に向けたさらなるひずみ制御技術の確立に取り組んだ。第一原理計算を用いた解析の結果、(1)ベータ鉄シリサイドにおける直接遷移エネルギーの減少にはa軸格子定数変化の寄与は大きいが、b,c軸格子定数変化はほぼ影響しない、(2)Fe-Fe同士の原子間距離が直接遷移エネルギーの変化に対して主に寄与している、といった知見を得ることができた。本結果は今後、直接遷移化に向けたひずみ制御技術の確立を目指すにあたり、どのようなひずみ導入が望ましいのかを推定する際の重要な指針であると考えられる。また、第三元素としてゲルマニウムを用いたひずみ制御技術の確立を目指した。成長温度を無添加の場合より低下させ、Si/Fe供給比を小さくすることにより、ゲルマニウムをドーピングすることができる可能性を示す結果を得ることができた。ゲルマニウム添加によるひずみ制御が実現した場合、直接遷移化による光電子集積回路用Siベース高輝度発光デバイス創出への寄与が見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度得られた、ひずみ増大に伴う直接遷移端の減少という実験事実は直接遷移化の可能性を大きく示唆するものであり、学術的に重要な結果であると考えられる。また、理論計算を導入することにより得られた特定のボンド長変化が直接遷移端減少に作用するという知見は、ひずみ制御を行う上での重要な実験指針である。以上の結果より、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ひずみ制御実現に向けての、ゲルマニウムを用いた成長条件最適化が重要であると考えられる。現在取り組んでいる鉄シリサイド中へのゲルマニウムドーピングに加え、基板をSiからSiGeに変えることによるひずみ制御も目指す。ひずみ制御技術の確立により直接遷移化が実現した場合は、LEDの作製に取り組む予定である。
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Research Products
(17 results)