2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00893
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小出 太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 環拡張ポルフィリン / シングレットビラジカル / 電子核二重共鳴 / メビウス芳香族性 |
Research Abstract |
メゾ無置換型のヘキサフィリンの金属錯体の合成を行い、その物性を明らかにするとともに、金属錯化に伴う骨格の変換を利用し、一重項基底ビラジカル種(シングレットビラジカル)であるメゾジケトヘキサフィリンの単離とその物性調査を行った。特に、単結晶ESRや、電子核二重共鳴(ENDOR)などを用いてその磁気物性について詳細な検討を行っており、電子がヘキサフィリン骨格上に非局在化していることを実験的に確かめた。シングレットビラジカルはこれまでにも報告例はあるもののいまだ謎が多く残る化学種であり、今回合成に成功したメゾジケトヘキサフィリンのように安定に単離でき結晶化も容易な化合物は、今後、シングレットビラジカルの性質や特徴について研究を行う上で非常に重要であると考えている。また、同様の骨格での芳香族化合物、モノラジカル種についても以前に報告しており、系統的に調査を行う上でも非常に重要な化合物群であると考えている。 また、ベータ位に置換基を持つヘキサフィリンの金属錯化についても検討し、金属錯化によって構造を固定することによって、ねじれたメビウス構造を固定化し、ベータ位の置換基の位置による異性体の分離が可能であることを明らかにした。この化合物のメビウス構造への変化については、以前に酸を加えることによって達成しているが、その際には溶液中で速い平衡があり、異性体を分離することはできていなかった。今回の結果から、金属錯化を行うことによってメビウス構造が固定化できることが分かり、今後、メビウス構造の環拡張ポルフィリンについての研究を行う際に固定化の方法として金属錯化が有効な方法であることを示す結果となった。
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Research Products
(6 results)