2012 Fiscal Year Annual Research Report
プロテアーゼ受容体PAR-2を軸としたイヌIBD病態の解明
Project/Area Number |
10J00914
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 真吾 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | イヌ / 炎症性腸疾患 / PAR-2 / プロテアーゼ |
Research Abstract |
本年度は、イヌIBDの慢性腸炎発症におけるPAR-2の役割を検討することを目的として研究を実施した。健常犬 (n=25)およびIBD症例(n=40)の十二指腸粘膜を内視鏡下生検により採取し、リアルタイムPCRおよび免疫染色によりPAR-2遺伝子・蛋白発現を検討したところ、十二指腸粘膜におけるPAR-2遺伝子・蛋白発現の両方が、健常犬と比べIBD症例で増加していた。続いて、健常犬(n=25)およびIBD症例(n=40)から糞便を採取し、アゾカゼインアッセイによりセリンプロテアーゼ活性を測定したところ、健常犬と比較してIBD症例では有意に高く、さらに臨床症状の重症度と正の相関を認めた。以上の結果より、イヌIBD症例の腸管ではPAR-2とそのリガンドであるセリンプロテアーゼ活性の両方が増加していることが明らかになった。 次に、健常犬(n=10)から採取した十二指腸粘膜をexvivoで培養し、これらの培養組織にトリプシンまたはPAR-2アゴニストをそれぞれ添加後、炎症性サイトカインおよびケモカイン遺伝子発現の変化をリアルタイムPCRにより検証した。また、トリプシンによるサイトカイン誘導効果がセリンプロテアーゼインヒビターにより阻害できるかをPMSFを用いて検証した。イヌ小腸組織にトリプシンまたはPAR-2アゴニストを添加することで、IL-1β、IL-8、MECおよびフラクタルカインの遺伝子発現が誘導された。このトリプシンによるサイトカイン誘導効果は、PMSFにより有意に減弱した。以上の結果より、セリンプロテアーゼ-PAR-2経路が炎症性サイトカイン・ケモカイン誘導を介してイヌIBDの発症に関与している可能性が示唆された。また、セリンプロテアーゼインヒビターにより、トリプシンによるサイトカイン誘導が阻害できたことから、イヌIBDの治療にプロテアーゼインヒビターが有用である可能性が示された。現在、メシル酸カモスタットというプロテアーゼインヒビターの経口薬を用いてイヌIBDの治験を進めており、一部の症例で効果があることを確認している。
|