2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しいポルフィリノイドの創製と有機金属触媒への展開
Project/Area Number |
10J00921
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
徳地 澄人 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員・(DC1)
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Keywords | ポルフィリン / パラジウム / 環状ポルフィリン多量体 / Glaserカップリング / ブタジイン |
Research Abstract |
研究実施計画に沿って、ポルフィリンを用いた新規配位子合成を試みた。その過程で、ポルフィリンβ位のホウ素を直接エチニル基に変換することに成功した。従来エチニル基の導入には不安定なジヒドロキシ体を経由する必要があったが、プロモアセチレンを用いたグロスカップリングにより収率の向上と新たにテトラエチニル化体の合成に成功した。得られたエチニル化ポルフィリンをビルディングブロックとして用いることにより、新規多量体を合成することに成功した。 環状ポルフィリン多量体は、光合成中心における光捕集アンテナのモデル分子として、あるいは新規機能性分子創成の観点から、古くから盛んに研究がおこなわれてきた。中でもブタジイン架橋環状ポルフィリン多量体はポルフィリン間の大きな電気的相互作用が期待できるため、その合成が期待されるが、合成例は限られていた。 当研究室ではβ,β'-ジエチニルポルフィリンから銅(II)を用いたGlaserカップリングによりブタジイン二重架橋環状ポルフィリン二量体を合成し、それが大きな二光子吸収断面積を有することを報告している。今回ジエチニルポルフィリンに対して、パラジウム(II)触媒を用いることによりブタジイン架橋ポルフィリン三量体が選択的に合成することに成功した。銅(II)を用いた反応では三量体はほとんど得られなかったため、この選択性は炭素-炭素結合形成時における反応機構の違いに由来すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度研究実施計画に記したように、β位アセチルポルフィリンのイミン化により新規配位子を合成には成功した。しかし、それらは不安定であったため、新たにβ位に導入できる官能基を探ったところ、エチニル化に成功した。今回合成したβ位エチニルポルフィリンは新規配位子の前駆体としての利用が期待できる。さらに、パラジウム触媒を用いた酸化的カップリングを行なうことにより、新規三量体の合成にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回合成に成功したポルフィリン三量体に関しては、まずその光物性を検討する。また研究課題に即したテーマとしては、ポルフィリンの中心金属を利用して三量体をテンプレートとした反応への応用を検討中である。さらに、得られた単量体は新規配位子の前駆体として、官能基変換を行い、ポルフィリン外周部への金属錯化に取り組む予定である。 エチニル基新規導入法開拓により、テトラエチニルポルフィリンの合成が可能になった。テトラエチニルポルフィリンを用いた新たなポルフィリンテープ合成が可能であることを確認しているため、その収率向上、物性検討も行う。
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