2012 Fiscal Year Annual Research Report
海洋動物における同時的雌雄同体と性転換をつなぐ数理モデル
Project/Area Number |
10J00931
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山口 幸 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | フジツボ類 / 矮雄 / 同時的雌雄同体 / 動的最適化 / ゲーム理論 / 性配分 / 生活史戦略 |
Research Abstract |
海洋生物には、卵と精子を同時につくる同時的雌雄同体や、卵だけをつくる雌、それらに比べて体がとても小さな雄(矮雄)といった様々な性がみられる。矮雄がみられる海洋生物において、その多様な性表現をもたらす生活史戦略の違いを説明するための動的最適化を含むゲームモデルを作成した。 幼生が基盤に定着すると小型個体になるが、すぐに矮雄として繁殖することと、未成熟で成長を目指すことの選択ができる。後者は後に、大型個体に成長するが、大型個体は、雄としての繁殖機能(精子をつくって他個体を受精する)と雌としての繁殖機能(自ら卵をつくる)に資源を投資する。新規加入幼生が小型未成熟個体になる割合と大型個体の性配分が適応的に進化すると考えた。定着基盤もカニの甲羅のように不安定な場合もある。 まず、定常的な集団を考えた。幼生の新規加入と定着個体の死亡とでバランスした集団の構成比になり、個体の戦略も時間とともに一定であるとする。進化的に安定な個体群は、環境に餌が多く成長が速いときには、新規加入した幼生は矮雄にはならず全員が大型個体になり大型個体は同時的雌雄同体になる。これに対して、環境に餌が少なく成長が遅いときには、一部の個体が矮雄になり他が成長するが、後者が成長して大型個体になると雄機能を示さず雌になる。つまり集団は雌と矮雄の共存状態になる。どのようなパラメータでも、矮雄は同時的雌雄同体と共存することがない。 しかし、実際には同時的雌雄同体と矮雄の共存が見られる。そこで、定着基盤がカニの甲羅といった不安定な場所の場合を考えてみた。戦略が生息地の齢に依存するので進化的に安定な解を動的計画法で計算する。進化的に安定な個体群の構成は、生息地の齢に応じて、同時的雌雄同体のみ、同時的雌雄同体と矮雄の共存、雌と矮雄の共存と変化することがわかった。
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