2010 Fiscal Year Annual Research Report
青色光受容体フォトトロピンによる生体膜リン脂質の非対称性分布制御
Project/Area Number |
10J01094
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
相原 悠介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フォトトロピン / フリッパーゼ / 気孔開口 |
Research Abstract |
フォトトロピンは植物に特有の青色光受容体である。本研究では、植物のフォトトロピン情報伝達系の中でリン脂質輸送体・フリッパーゼが果たす役割の解明を目指した。 ・フリッパーゼ欠損植物の新奇表現型 植物のフリッパーゼの生理機能についてはいまだ不明な点が多い。本年度の研究において、シロイヌナズナにおけるフリッパーゼ遺伝子のひとつ、ALA3の欠損植物について、青色光による気孔開口が顕著に抑制されることを見出した。ala3欠損植物の孔辺細胞において、気孔開口の主要機構である"細胞膜プロトンポンプの活性化"を解析したところ、野生型と同様に、青色光により活性化された。このことから、ALA3は気孔開口の制御において細胞膜プロトンボンプの上流の情報伝達系には関与していないことが示唆された。 ・酵母に導入したフォトトロピンの光応答性の検出 シロイヌナズナ・PHOT2を出芽酵母に導入すると、フリッパーゼキナーゼの機能を相補する。しかしながら出芽酵母内のPHOT2は、青色光を受容する機能を失ってしまっていた。この課題を解決するため様々なフォトトロピン分子種を出芽酵母に導入することを試みた。その結果、単細胞緑藻クラミドモナスのフォトトロピン(CrPHOT)が、出芽酵母内でも青色光に依存した活性を示すことを見出した。これにより、青色光によるフォトトロピンの活性化を"酵母の生育"で簡便に判定する実験系を確立することに成功した。本実験系は、フォトトロピン分子の機能改変を解析する際の簡便で有効な評価系となると考えられる。 ・フォトトロピン分子内の新奇変異体の探索 フォトトロピンは光を受容する発色団領域(LOV1・LOV2)とセリンスレオニンキナーゼ領域をもつ。これまでLOV領域内の光反応については詳しく解析されてきたものの、光受容の後、キナーゼ活性が制御されるメカニズムについてはいまだ不明な点が多い。そこで、上述のCrPHOT導入酵母を用いた実験系により、フォトトロピン分子内変異のスクリーニングを行った。その結果、暗所でも活性化してしまう変異型フォトトロピンを多数取得することができた。興味深いことに、LOV2領域のN末端側隣に位置する新奇のヘリックス(A'α)に変異が集中していた。フォトトロピン分子内の光情報伝達において、A'αヘリックスが重要な機能を果たしている可能性が初めて示唆された。
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