2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J01190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
出田 真一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 鉄系高温超伝導体 / 角度分解光電子分光 / 電子構造 / 超伝導ギャップ / 擬ギャップ / フェルミアーク |
Research Abstract |
高温超伝導体の基礎研究において究極の目的は、超伝導機構を解明し、室温超伝導を実現することである。現時点で、超伝導転移温度Tcの最高記録は高圧下のHg系銅酸化物高温超伝導体でTc~169Kを達成し、近年発見された鉄系高温超伝導体では、Tc~55Kが報告されている。しかしながら、更に高いTcを実現するためには、物質設計の指針が必要であり、微視的な超伝導機構の解明が強く望まれる。 本研究では、CuO2面の枚数の増加とTcとの関連を明らかにするために、3枚のCuO2面をもち、高いTc(~110K)を示すBi系銅酸化物高温超伝導体Bi2223と、CuO2面を1枚もつ銅酸化物高温超伝導体のなかで、最も高いTcを示ずHg系銅酸化物高温超伝導体Hg1201の電子構造を、角度分解光電子分光(ARPEs)を用いて詳細に調べた。Bi2223の結果では、超伝導状態と、常伝導状態で観測されたエネルギーギャップ、及びエネルギーギャップの存在しない波数領域(フェルミアーク領域)の間に関係を見出だし、Tcを決定する重要な秩序パラメータを見出だした。 鉄系高温超伝導体では、母物質BaFe2As2のFeサイトにNi,Cuを不純物ドープした、電子ドープ型鉄系超伝導体の電子構造をARPESを用いて観測し、不純物ドープが超伝導に与える影響について詳細に調べた。一般に電子ドープ型鉄系超伝導体は、電子がFeAs層にドープされることにより、電子フェルミ面の体積は大きくなる一方で、ホール面のそれは小さくなると予想されるが、CuをドープしたBaFe2As2の電子フェルミ面の体積はCuの量に関わらず変化しなかった。不純物置換によりドープされた電子の振る舞いを理解するための、重要な知見を得たと考えられる。
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Research Products
(16 results)