2010 Fiscal Year Annual Research Report
ビルディングブロックの組み上げによる機能性ナノ空間材料の創製
Project/Area Number |
10J01201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茂木 堯彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トポタクティック合成 / ゼオライト / 層状シリケート / ボトムアップアプローチ |
Research Abstract |
学部の研究の発展として、ビルディングブロックの候補たる層状シリケートを酸処理と焼成によりゼオライト化するトポタクティック合成について検討した。これはゼオライト合成において近年注目されているボトムアップアプローチである。用いたビルディングブロックはRUB-15と呼ばれる層状シリケートであり、その層間にはテトラメチルアンモニウムイオンと水分子が存在し、水素結合などによって層構造を保持している。層間の未結合シラノール基(Si-OH)を脱水縮合により結合させることで、SOD構造を持つ三次元結晶へと変化することを報告したが、その際に酸処理を行うことが必要であった。 当該年度には特に酸処理の役割及び、中間体についての考察を行った。既報に従い合成したRUB-15をギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸それぞれにおいて1M、3M、6M、9Mの濃度の溶液内で2時間攪拌し、濾過によって回収した。60℃で乾燥させた後に800℃で5時間焼成し最終的なサンプルを得た。中間体及び最終生成物の構造はXRD、TEMにより、Siの状態は29Si固体NMRにより、中間体に含まれる有機物の状態は13C固体NMRにより評価した。中間体生成の処理時間を変化させることで、途中経過について考察を行った。 それぞれのカルボン酸での異なる能で処理したRUB-15のXRDパターンと、各焼成後のXRDパターンからは、酢酸とプロピオン酸を用いた場合にのみ焼成後にSOD構造由来のパターンが確認され、トポタクティック合成が上手く行ったことが示される。それ以外の場合においては、焼成後にアモルファスが得られていることが分かる。また29Si固体NMRからも同様に、酢酸とプロピオン酸を用いた場合は焼成後に結合が不十分なSiに由来するピークが減少し、層状シリケートに存在した表面シラノール基が縮合によって結合し、その量が減少したことが分かる。それに対し、13C固体NMRからは処理に用いた各カルボン酸分子がRUB-15の中間体に存在することが示される。特に、酢酸とプロピオン酸の場合には、本来RUB-15に存在するテトラメチルアンモニウムは存在しないと考えられ、層間にはカルボン酸分子のみが存在すると考えられる。一方、ギ酸とブチル酸で処理した場合においては、層間にカルボン酸分子とテトラメチルアンモニウム分子との両方が存在していると考えられる。RUB-15の骨格構造を考えると、テトラメチルアンモニウムイオンの存在は、未完成のシラノール基(Si-O-)の存在を示唆している。酢酸とプロピオン酸の場合ではテトラメチルイオンに代わりプロトンによってチャージバランスをとることで、シラノール基が100%近く形成したと考えることができる。このことより、表面シラノール基を全てプロトンで補填することがトポタクティック合成の1つの鍵であることが分かった。
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Research Products
(4 results)