2011 Fiscal Year Annual Research Report
ビルディングブロックの組み上げによる機能性ナノ空間材料の創製
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10J01201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茂木 堯彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ゼオライト / 結晶化前駆体 / 有機構造規定剤 / エージング / UZM-4 / フェリエライト |
Research Abstract |
エージング過程と結晶化過程で異なる有機構造規定剤(OSDA)を用いることで、新たなゼオライト合成を目指す試みとして、Charge Density Mismatch法が提案されている。この手法では、エージング過程において電荷密度の低い、比較的大きなOSDAをAlリッチなゲルに添加することで結晶化を抑制している。また、近年のゼオライト合成の鍵である有機SDAは、年々その複雑さを増し、コストとプロセスの観点から新規ゼオライトの工業応用を阻害している。2003年にUOPによって報告されたUZM-4と呼ばれるゼオライトは、Charge Density Mismatch法という新しいアイデアを導入することで簡単な2種類のSDAをゼオライト合成に用いた。簡単なSDAから新規構造を得ることに成功したが、最終生成物には1種類のSDAが優先的に含まれている。当該年度には、このゼオライトの原料の混合~結晶化の過程を詳細に検討することで、その詳細を明らかにした。UZM-4合成の際に必須となるエージング過程について特に詳細に検討した。まず、2種類のSDAの組み合わせであるが、1段階目に加えるSDAは既報のテトラエチルアンモニウムに限らず、アルキル鎖長の長いテトラプロピル・テトラブチルアンモニウムによっても合成可能であることを見出した。NMR測定によって、エージング過程では強塩基性条件によって原料シリカが液相へ溶解し、アルミと反応することでアルミノシリケート種に変化していくことを確認した。このアルミノシリケート種は高度にネットワーク化した形状をとることは無く、小さなクラスター状で安定化されていた。これは添加している有機物の効果によるものと考えられる。また、エージングが不十分な場合には、SDA2の添加によって前述の小さな構造体が形成する前にネットワーク化したアルミノシリケートの沈殿が生じてしまい、UZM-4の合成に至らないことが判明した。以上の様に、エージング段階に添加されるSDAlには、1)電荷密度が原料を結晶化させない程度に低い 2)シリカが十分溶けるOH-を供給する 3)低分子量のアルミノシリケート種を液中で安定化させるという条件が必要であることが分かった。 また、ゼオライト合成のエージング過程における結晶化前駆体について、詳細な検討を行った。ゼオライト合成におけるエージングでは結晶化前駆体が形成されていると予想されているが、その詳細については明らかになっていない。エージングが重要なゼオライトとしてFerrieriteが知られている。共同研究者と共にFerrierite結晶化過程を詳細に検討し、結晶化直前に板状の前駆体が形成していることを見出した。XRD、Raman分光、元素分析の結果により、結晶化に際し、Alを多く含んだ5員環リッチなFerrierite Sheetが形成していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビルディングアップ合成の手法としてトボタクティック合成を用い、初めて中空板状ソーダライトを合成し、その前処理としてカルボン酸による処理が必須であることを論文として報告した。また新たに、結晶化前駆体に注目し、幾つかのゼオライト系に対して中間過程の考察を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、結晶化前駆体に注目し、ゼオライト合成の鍵となる点について焦点を当てる予定である。また、フランスのCaen大学にてV.Valtchev博士と共同研究を行い、特に中間体の分析における研究を行う予定である。
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Research Products
(6 results)