2010 Fiscal Year Annual Research Report
密度行列繰り込み群法を超える行列積変分状態最適化法の構築
Project/Area Number |
10J01209
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 宏 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 密度行列繰り込み群 / 行列積状態 / 変分法 / 量子スピン系 / 計算物理 / アルゴリズム / テンソル積状態 / ハイゼンベルグ模型 |
Research Abstract |
高次元量子スピン系の熱力学的極限における物理量を精密に評価する数値計算手法の開発は、多様な物理を理解する一つの手段となるため重要である。本研究は、1次元量子スピン系で広く用いられる密度行列繰り込み群(DMRG)法を構成する行列積状態(MPS)の解析および拡張を行い、高次元量子スピン系へ適用可能なMPS最適化法の提案と検証を目的とする。並進対称性を持つ一様1次元古典/量子スピン系の変分状態として任意の並進対称性をもつMPSを用意し、その並進対称性を保ったままMPSを最適化した。その結果、系の並進対称性を破って発現する磁化プラトー状態などの場合、同様にMPSも並進対称性を破ることで最も効果的に変分エネルギーを下げられることが見いだされた。これは、高次元系において適切なMPSの対称性を検討する際に有用な情報の1つとなりうる。境界開放端の一次元量子系に対して、相互作用のエネルギースケールを中央から端に向かって双曲余弦関数的に増大させる「双曲変形」を施すと、基底状態と励起状態のエネルギーギャップは拡大されるとともに、MPSがよい変分状態になる場合が報告されている。本研究は、このエネルギーギャップの双曲変形に対する依存性を捉えるスケーリング関数を提案し、幾つかの一次元量子スピン系において本スケーリングが有効であることを示した。その際、系の熱力学的極限での物理量(励起ギャップなど)も精密に評価できることが分かった。高次元系においても同様の事情が発生する変形を見いだせるかどうかは今後の課題のひとつである。
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