2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J01280
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤松 寛文 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アモルファス / 磁気的性質 / 誘電的性質 / 希土類金属 |
Research Abstract |
研究課題「多重強秩序性を示すアモルファス酸化物の創製」を目指し、研究を遂行した。 ほとんどのアモルファス酸化物磁性体では、反強磁性的相互作用が支配的に働き、低温で磁気モーメントがランダムな方向を向いた状態で凍結する、いわゆるスピングラス転移が観察される。一方で申請者らはこれまでに、ガラス中でEu^<2+>イオン間に強磁性的相互作用が働くことを明らかにしてきた。その中で、EuTiO_3という酸化物に注目し、その結晶と非晶質の磁性の違いを明らかにするため、その様々な磁気的性質を調べた。 EuTiO_3結晶が5.3Kにおいて常磁性-反強磁性転移を示すのに対して、アモルファスEuTiO_3は5.5Kにおいて常磁性-強磁性転移を示すことが明らかになった.また、EuTiO_3のワイス温度が+3.8Kであるのに対して、アモルファスEuTiO_3のワイス温度は+8.0Kであった。このことから、非晶質化によりEuTiO_3の磁気的相互作用が強くなることが示唆される。非晶質EuTiO_3の低温における磁気転移をさらに詳細に調べるために、交流磁化測定を行った。交流磁場の振幅を1Oeとして、0.3~300Hzの周波数で測定を行った。磁化曲線は低温で大きな周波数依存性を示した。これは一般的な強磁性体では観察されない。つまり、非晶質EuTiO_3が低温で常磁性から強磁性に転移した後スピングラス相に転移する、すなわちリエントラントスピングラス転移を示すことが示唆される。低温ではアモルファス特有の不規則さが磁性に現れるという非常に興味深い結果が得られた。
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