2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J01280
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤松 寛文 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アモルファス / 磁気的性質 / 誘電的性質 / 希土類元素 |
Research Abstract |
本研究で着目しているEuTiO3の電子構造と磁性の関係について、第一原理計算を用いて調査した結果、Ti 3d状態を介した反強磁性的超交換相互作用が、Eu 4fスピンの反強磁性的秩序ならびにスピン-格子相互作用に対して大きな役割を担っていることが明らかになった。計算は、HSEO6ハイブリッド汎関数を用いて、平面波基底PAW法(VASP code)により計算を行った。平衡体積において、J1が負およびJ2が正であり、磁気基底状態がG型の反強磁性状態であることがわかった。これは実験的に報告されている結果と一致する。また、格子体積の増加に伴い、J1の符号が負から正に変化し、磁気基底状態がG型の反強磁性から強磁性へと変化することがわかった。次に、この挙動の微視的メカニズムを考察するために、EuTiO3の電荷密度を調べたところ、Euの周りだけでなく、TiやOの周りにも電荷密度が現れていることがわかった。これは、Eu 4f状態がTi 3dおよびO 2p状態と相互作用していることを示唆している。特に、格子体積の減少に従い、Eu 4fとTi 3d状態間の相互作用が顕著になった。J1の格子体積変化を踏まえると、Eu 4fスピン間にTi 3d状態を介した反強磁性的超交換相互作用が働いていることが示唆される。EuTiO3と同様に、伝導帯がBサイトカチオンのd状態で形成されるEuZrO3やEuHfO3において、格子体積の増加に伴うJ1の上昇が見られたのに対し、伝導帯がBサイトカチオンのs状態で形成されるEuSiO3やEuGeO3においては、J1は強磁性的であり、格子体積の増加に伴いJ1が減少した。この結果は、上記のメカニズムを支持するとともに、Eu 4fスピン間にBサイトのd状態を介した超交換相互作用が働くということも示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題における目的の一つである、Eu2+系化合物の電子構造を第一原理計算により明らかにすることができ、さらには磁性と電子構造の非常に興味深い関係についても明らかにすることができた。また、その結果は学術誌に投稿し採択されており、本研究課題の目的を充分に達成できていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
第一原理計算により、Eu2+系ペロブスカイト化合物の磁住と電子構造の関係を調べている中で、その構造と磁性の関係についても興味深い知見を得ることができており、今後もアモルファス物質に加えて、結晶化合物についても精力的に研究を進めていく予定である。
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