2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J01281
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 雅也 大阪大学, 産業科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | Streptococcus pneumoniae / 病原微生物学 / 赤血球 / 侵入 / 付着 / 抗貪食能 |
Research Abstract |
肺炎球菌は、グラム陽性菌において黄色ブドウ球菌と並んでもっとも敗血症を起こしやすい菌の一つである。肺炎球菌による感染症が敗血症などの侵襲性の病態に進展する過程においては,菌が定着したのちに血管内へと移行し,宿主の免疫機構を回避して増殖する必要がある.本研究では,肺炎球菌と赤血球の相互作用について着目し、分子生物学的な解析を行った. 今年度は,初年度に得られた成果をもとに、赤血球側の肺炎球菌結合分子の同定、ならびに赤血球の存在が菌の増殖に及ぼす影響の検討を行った.赤血球の膜タンパクを電気泳動にて展開し,リガンドブロット法を用いてビオチン標識した肺炎球菌の表層タンパク,DnaK,FusA,Enolaseと結合する分子を検索した.結合を示す赤血球のタンパクバンドを質量分析装置により解析したところ,Band3,α-spectrin,β-spectrin,β-actinが同定された. また、鉄イオンキレート剤の存在下、または非存在下において、赤血球と肺炎球菌または黄色ブドウ球菌を混和した後、血液寒天培地上に播種し生育コロニー数を計測した。その結果、鉄イオンキレート剤存在下では黄色ブドウ球菌の増殖は有意に阻害されたのに対し、肺炎球菌の菌数は培養6時間後には170倍以上増加した。次に、各種酸化ストレス阻害剤による赤血球存在下の肺炎球菌菌数の変化を計測した。一酸化窒素合成阻害剤は菌数に変化を及ぼさなかったが、鉄イオンキレート剤、フリーラジカルスカベンジャー、またはスーパーオキシドディスムターゼ様活性物質存在下では培養2時間後の菌数が10倍以上増加した。 これらの結果から、黄色ブドウ球菌は増殖に鉄イオンを必要とするのに対し、肺炎球菌は、増殖に鉄イオンを必要とせず、赤血球の鉄イオンが産生する活性酸素によって増殖が阻害されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤血球存在下における菌の生育について、当初の予想と異なる結果が得られたため、一部研究計画を変更しその機構の解析を行った。そのため、当初の計画と異なる進行を見せている点はあるが、全体を通して計画にそって研究が進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に年次計画にそって研究を遂行する。一部変更点として、肺炎球菌の赤血球侵入機構のさらなる解析を行う。具体的には、グラム陽性菌のタンパクを菌体表層に架橋する働きを持つSortaseA,肺炎球菌の溶血毒素であるPneumolysin,自己融解酵素LytAの遺伝子欠失株をそれぞれ作製し、赤血球侵入機構への関与を、野生株ならびに各遺伝子欠失株の侵入率を比較することで解析する。さらに、リピッドラフト形成阻害剤,アクチン重合阻害剤で赤血球を処理し、肺炎球菌の侵入率を比較する。
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Research Products
(6 results)