2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J01284
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤本 裕 東北大学, 金属材料研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 結晶 / シンチレータ / 発光 |
Research Abstract |
本研究では、3ヘリウム資源の枯渇により、世界的に急務となっている^3Heガス検出器の代替候補となる中性子シンチレータ材料の開発を目的としている。これまでの材料探索の結果では、中性子シンチレータを開発する上で、微量添加する発光中心元素が固溶できるサイトが複数ではないホスト材料が望ましいという見解に至り、本年度の研究においては、Ca_3(BO_3)_3、SrB_2O_4、CaB_2O_4といった固溶サイトが単一であるボレート材料に着目し、これらにCe^<3+>、Pr^<3+>、Eu^<2+>を微量添加したものについて、本研究室独自の技術であるマイクロ引き下げ法により作製し、光学及びシンチレーション特性について評価を行った。光学特性評価として、透過率測定を行ったところ、すべてのサンプルにおいて可視光波長領域に対して70-80%の高い透過率を示すことを確認した。また、シンチレーション特性評価においては、α線励起によるラジオルミネッセンス測定により、Ca_3(BO_3)_3、SrB_2O_4、CaB_2O_4結晶に添加したCe^<3+>、Pr^<3+>、Eu^<2+>の5d-4f許容遷移に伴う応答を観測し、これらは光励起の際の結果とも一致していることを確認した。さらに、中性子応答を模擬したα線励起波高値スペクトル測定により、α線による応答ピークが検出可能かを検討した。結果として、Ce^<3+>、Pr^<3+>を添加したCa_3(BO_3)_3、SrB_2O_4、CaB_2O_4結晶において、明瞭なα線による応答ピークを確認し、フォトンカウンティング法の放射線測定においても十分な性能を示すことが分かった。また、波高値スペクトル測定より、相対発光量を求めたところ、Ce^<3+>を添加したCa_3(BO_3)_3結晶が最も高い発光量を示し、市販品の中性子用リチウムガラスシンチレータとほぼ同等であることが見出された。この結果は、これまで報告されているボレートシンチレータ材料の中でも、高い発光量が優れており、今後、中性子シンチレータ材料を開発する上でも、非常に重要な材料設計指針となると思われる。以上の研究成果については、国内(応用物理学会)及び国際学会(SCINT2011,IEEE2011など)、国際誌にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボレートシンチレータ材料の探索の結果、α線励起時波高値スペクトルにより、Ce^<3+>を添加したCa_3(BO_3)_3結晶が市販品の中性子用リチウムガラスシンチレータと同等の発光量を示す材料が確認された。この結晶はこれまで報告されている中性子用ボレート結晶の中でも最も高い発光量を示すことが分かっており、大口径化が可能であれば、既存の中性子用^3Heガス検出器の代替に十分な可能性を持っている。以上のことから、現在の研究の達成度としては非常に順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、CZ法により大口径化及び高品質化したCe^<3+>:Ca_3(BO_3)_3結晶を用いて、中性子応答評価や、位置敏感型微弱光検出器と組み合わせて熱中性子イメージングを試みる。
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