2011 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸岩礁域の生態系における小型紅藻マイクロハビタットの重要性
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10J01322
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
早川 淳 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所・資源生産部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有節サンゴモ群落 / サザエ / 岩礁生態系 / 小型甲殻類 / 貝殻礫底 / 小型巻貝類 |
Research Abstract |
本研究の調査定点である相模湾東部長井沿岸域の有節サンゴモ群落、テングサ群落、無節サンゴモ群落において方形枠を用いて群落を構成する海藻類、および群落内の小型動物群集を周年にわたり定期的に採集し、その生息密度の季節的変化を調査した。この野外調査によって、サザエ・アワビ類、およびそれらと被食-捕食関係や餌料を巡る競合関係にあると思われる動物種に関して、個体数密度の時空間的な変動を示すデータを蓄積し、そのデータの一部は投稿論文として発表した。また、有節サンゴモ群落内から高頻度で採集されるカニ類の1種が新種であることが判明し、共同研究者が論文を投稿中である。これまでの研究において野外調査と室内実験の結果から、小型紅藻群落内の小型巻貝類にとってベラ類が重要な捕食者となっていること、および紅藻群落が捕食の低減効果を備えることが明らかになっている。本年度では、異なる殻高のサザエ稚貝を用いて室内実験を行い、稚貝のサイズによる捕食の低減効果の差異を検討し、小型紅藻群落の隠れ場としての機能を明らかにした。有節サンゴモ群落を初期生息場とするサザエの初期生残に影響する要素を検討するため、小型海藻群落の周辺に存在する貝殻礫底を調査し、サザエ稚貝の死殻を継続的に採集した。死殻に残る捕食痕跡の調査、および室内実験を行うことで、捕食痕跡からの捕食者推定を可能とし、その成果の一部は投稿論文および学会発表にて発表した。加えて、貝殻礫底に集積する貝殻の組成は周辺の有節サンゴモ群落の貝類相と近似することが明らかになると共に、周辺のマイクロハビタットに比して特異な動物群集が貝殻礫底に存在することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査において小型紅藻群落の生息場としての重要性を示すてデータが順調に蓄積されている。また、室内実験でも十分な成果が得られており、投稿論文・学会発表での成果発表もおおむね順調に行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度も引き続き野外調査のデータを蓄積すると共に、小型紅藻群落の機能をより詳細に検討するための室内実験を行う。また、本研究課題の最終年度であるため、投稿論文などによる研究発表に一層注力する。
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Research Products
(2 results)