2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオミクスを用いた新しいカルモデュリン標的分子の同定とシグナル伝達機構の解明
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10J01342
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
横倉 沙紀 (揺本 沙紀) 香川大学, 医学部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | CaMKK / 自己リン酸化 / タンパク質リン酸化酵素 / 細胞内カルシウム / 自己阻害 |
Research Abstract |
CaMKK(Ca^<2+>/calmodulin-dependent protein kinase kinase)は多機能性CaMK(CaMKIおよびCaMKIV)やAMPK(5'-AMP-activated protein kinase)の活性調節リン酸化酵素であり、それ自身もCa^<2+>/CaMを活性化因子とした自己阻害メカニズムにより制御されている(Tokumitsu & Soderling JBC1996, Tokumitsu et al. JBC2000)。最近では、遺伝子改変マウスや独自に開発した特異的阻害剤STO-609(Tokumitsu et al. JBC2002)を用いた研究より、CaMKKを介したリン酸化カスケード反応の多様性が示されている。本研究は、CaMKKの機能調節の一つとして自己リン酸化による酵素活性発現の制御について検討したものである。CaMKKはPKAによるリン酸化とそれに伴う不活性化が報告されているが、それ自身の自己リン酸化の生理的な意義については不明である。培養細胞に発現させたCaMKKαおよびβは共にリン酸化されており、精製したCaMKK組み換え体も既にリン酸化されていることが明らかとなった。一方、リン酸化酵素活性を消失させたCaMKK変異体は全くリン酸化されていないこと、さらにはこの変異体を野生型CaMKKはリン酸化できないことから、CaMKKαおよびβのリン酸化は活性化因子であるCa^<2+>/CaMに依存しない分子内自己リン酸化によるものと結論づけられた。LC-MS/MS解析によりCaMKKαおよびβの分子内自己リン化部位を比較したところ、CaMKK6はその自己阻害領域内のThr482がリン酸化されていたが、CaMKKαにおける相同のThr残基(Thr446)は非リン酸化状態であった。さらにCaMKKβのThr482をAla残基に置換させたところ、野生型CaMKKβが示す70%以上の高いC^<2+>/CaM非依存性活性は半減した。この結果から、CaMKKβのThr482の分子内自己リン化は部分的に自己阻害能を抑制することにより、高いAutonomous活性(Ca^<2+>/CaM非依存性)を発現させるものと考えられる。このことは自己阻害領域がリン酸化されていないCaMKKαのCa^<2+>/CaM非依存性活性が低いことと良く一致している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は共著者として、論文をBiochemistry(Generation of Autonomous Activity of Cat2+/Calmodulin-dependent Protein Kinase Kinase □ by Autophosphorylation,Tokumitsu H,Hatano N,Fujimoto T, Yurimoto S and Kobayashi R,Biochemistfy 50,8193-8201,2011)とBiochem.Biophys.Res.Comm.(Identification of a Novel CaMKK Sunstrate, Fujimoto T, Hatano N, Nozaki N,Yurimoto S, Kobayashi R, and Tokumitsu H, Biochem.Biophys.Res.Comm. 410, 45-51, 2011)発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
Mg-GTPでCaMKKとAMPKのサブユニットは活性化ループにそれぞれ、Thr177とThr172がリン酸化されていることがわかった。この結果は、効率的にin vitroでのThr177でのCaMKIの触媒ドメインをリン酸化するリン酸供与体としてのMg-GTPを活用した組換えCaMKK isoformと一致する。CaMKK isoformは、Mg-ATPとAMPKのサブユニットをリン酸化しながら、唯一のCaMKKは、in vitroでのMg-GTPでAMPKをリン酸化することが可能である。今後は、GTPを用いた動態解析を行い、リン酸供与体としてのMg-GTPを利用するCaMKKのユニークな能力は、阻害剤のSTO-609を使用した組み合わせでCaMKKのための新たな下流の標的キナーゼをスクリーニングしたい。
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