Research Abstract |
本年度は,熱帯ウナギの回遊生態との相違を明らかにするため,まず,ウナギA.japonicaの分布北限に生息する個体に着目し,その回遊生態を明らかにした.また,熱帯ウナギA.marmorataの回遊生態の解明を試みた. 大槌湾,大槌川支流,小鎚川河口や宮古湾で採集されたウナギ耳石のSr/Ca比から本種の回遊履歴を推定した.採集されたウナギは3才から11才で,成長段階は黄ウナギか銀ウナギであった.耳石Sr/Ca比は中心部で最大値12×10^<-3>-16×10^<-3>を示した.海洋生活期を除く全生活史にわたる平均Sr/Ca比は3.1×10^<-3>-6.9×10^<-3>であった.これらのウナギは河口ウナギか海ウナギと判断された.降海回遊直前の銀ウナギは,河口ウナギか海ウナギであった.以上のことから,本種の分布の北限に生息するこれらのウナギは,多様な生活史を有し,沿岸域に接岸後,成長のために淡水域に遡河せず,外洋域へ向けて産卵回遊を行う直前まで一生を海や河口域で過ごすことが明らかになった. 小笠原諸島に生息するオオウナギには,3つの回遊様式が見られた.すなわち,生活史を通して淡水域で生息していたもの.そして,生活史を通して汽水域で生息していたもの.さらに,接岸した後,淡水域でしばらく過ごした後,汽水域に戻って生活していたものである.全個体の52%が汽水域を利用していた.また,感潮域で採集された個体では,79%が汽水域を利用していた.このことから,小笠原諸島に生息するオオウナギは,多様な回遊履歴を有すると考えられた.本研究で得られた結果は,他地域に生息する本種の回遊生態とは異なっていた.
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