2011 Fiscal Year Annual Research Report
就学前児のコミュニケーション能力の発達―反応バイアスと語用論理解からの検討―
Project/Area Number |
10J01365
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大神田 麻子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | グライス / 肯定バイアス / コミュニケーション / 語用論 / 反応バイアス |
Research Abstract |
本研究計画では、子どものコミュニケーションの発達について、主に2つの軸から検討を行う。第一の研究は子どもが大人のyes-no質問に肯定バイアスを示すかの検討である。3歳児は6歳児に比べると強い肯定バイアスを示し、またその反応時間が優位に短かったことから、3歳児は6歳児とは異なり、かなり自動的に「はい」と答えるというこれまでの仮説が支持された。この研究成果はJournal of Experimental Child Psychologyに掲載された。また、去年度から行っていた、3、4歳児がビデオの中の大人とロボットに反応バイアスを示すか検討する実験を完了させた。さらに追加で3、4歳児が対面の大人に反応バイアスを示すかどうかも検討し、社会的プレッシャーを感じやすい場面(対面)と感じにくい場面(ビデオ)、権威を感じる相手(見知らぬ大人)と感じにくい相手(ロボット)という2つの次元における3,4歳児の反応バイアスを比較した。その結果、3歳児はどの場合でも肯定バイアスを示し、4歳児は状況によっては正しく回答できた。この成果については現在、国際雑誌に投稿中である。 第二の研究は子どもの語用論理解の発達を調べるものであった。去年に引き続き、4~6歳児と大人に、1人の質問者が2人の回答者に質問をする場面をビデオで提示し、おかしな回答をした回答者を選択するように求める実験を行った。他者が会話のルールに逸脱したことに気がつくことができるのは、5歳ごろからであることが分かった。この結果についても論文にまとめ、国際雑誌に投稿中である。 子どもが質問を用いた会話のやりとりをどのように理解しているかを調べることは、子どものコミュニケーション能力を明らかにする上で非常に重要である。また、発達心理学研究で子どもに遂行させる実験課題には質問を含むものが多い。何歳の子どもがどういった質問を理解できるのかを調べることは、今後の発達心理学で用いるべき実験手法に示唆を与えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで検討を行ってきた、子どもがyes-no質問に答えるまでの反応時間を計測した実験は、本年度に国際雑誌Journal of Experimental Child Psychologyに掲載された。また、去年度から今年度にかけてデータ収集を行った、3~4歳児がビデオの中の質問者に反応バイアスを示すかに関する研究と、4~6歳児と大人の語用論理解の発達を調べた研究は、すでにそれぞれ論文にまとめ、現在国際雑誌に投稿中である。さらに、日本とハンガリーの子どもの反応バイアスを比較検討する研究も国際雑誌Journal of Cross-Cultural Psychologyに掲載が予定されている。今年度中に研究の目的を達成できる見通しで、さらに追加実験も開始しており、本研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、次の実験計画に向けて新たな実験刺激を作成し予備実験を行う予定である。また、計画当初では、権威のない質問者として子どもを予定していたが、子どもは同じ子どもの年齢に敏感であるため、参加児よりも年上の子どもを質問者に設定すると、なんらかのプレッシャーを感じる可能性が出てきた。しかし参加児である3歳児を質問者として訓練するのは現実的ではなかったので、権威のない質問者として、新たにロボットの質問者を設定し、実験を行った。
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[Book] Children's responses to yes-no questions. In, Access to Language and Cognitive Development(Siegal, M.& Surian, L.(Eds.))2011
Author(s)
Fritzley, V.H., Okanda, M., Itakura, S., Lee, K.
Total Pages
252
Publisher
Oxford University Press