2011 Fiscal Year Annual Research Report
流体界面で自発的に積層する界面吸着多重膜の構造とその形成ダイナミクス
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10J01420
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宅見 洋輝 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 界面活性剤 / 吸着膜 / 多重膜 / イオンペアー / イオン液体 / X線反射率測定 |
Research Abstract |
界面活性剤が形成する吸着膜は通常単層であるが、陽イオン界面活性剤塩化ヘキサデシルピリジニウムと陰イオン界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム混合水溶液表面に形成される吸着膜は単層のものだけでなく、多層の場合もあることを報告してきた。これまで多重膜の詳細な構造や形成ダイナミクスに関する知見を得るために、時分解反射IR法、エリプソメトリー、動的表面張力法を適用して研究を行ってきた。本年度は親水基間に働く静電引力によるイオンペアー形成が、膜構造に及ぼす影響に関する知見を得るために、膜中でのイオンペアー形成により活性剤イオンと対イオンが横並びになることが報告されているイオン液体1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(C6MImBF4)と1-ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート(C6PyBF4)との混合系について、表面張力測定とその熱力学的解析により研究を行った。これまで、C6MImBF4が膜中で形成するイオンペアーは強く、通常はイオン-双極子間相互作用で混和しやすいことが予想されるブタノールとの混合系では、混和しづらいことが明らかになっていた。しかし、今回研究対象としたC6MImBF4-C6PyBF4混合系では、ほぼ理想的に混和し、かつ界面密度が上昇するとわずかに混和しやすくなるという結果が得られた。これは2種類の活性剤イオンが対イオンに対して静電相互作用と水素結合によりイオンペアーを形成し、対イオンが活性剤イオンの仲立ちをして混和性を上昇させていることを示唆している。一方で、多重膜の詳細な構造を調べるために、高輝度放射光施設SPring-8でのX線反射率測定を行うために利用申請を行い、ビームタイムを取得できた。X線反射率測定では、界面縦方向の電子密度プロファイルを明らかにすることができるため、多重膜の詳細な構造、例えば気相側に積層しているのか、液相側に積層しているのかを判断することができる。この手法を用いることで本研究はさらに進展することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SPring-8でのX線反射率測定の目途がたち、さらに、当初の計画を1歩進めたイオン液体の研究も行えていることから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
SPring-8でのX線反射率測定の目途がたっていることから、本研究を遂行する上での問題はないと考える。今後は、多重膜構造を明らかにするX線反射率測定と、イオンペアー形成による膜構造への影響を明らかにするイオン液体の研究を並行して進める予定である。
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Research Products
(1 results)