Research Abstract |
本年度は昨年度までの解析の再計算と風洞実験による数値解析の検証データの取得の二点を主たる目的として研究を進めた. 境界層高さに比べて粗度高さが比較的大きな割合を占める都市境界層では,粗度に作用する抗力が床面摩擦による抗力に比べて非常に大きくなることが知られている.この結果に基づいたモデルパラメータのチューニングを行い,実験結果に近い床面摩擦力を得ることができた.それに加えて,乱流構造の解析を行った.一般に,都市表面のような複雑な粗面上では,複雑な乱流構造が形成されると考えられているが,その中でも,特に,低速ストリークと呼ばれる周囲よりも低速度の流体塊は,粗度近傍からのejection現象と密接に関連し,運動量輸送に大きく寄与していると考えられており,都市境界層における運動量輸送を議論する上で重要な現象の一つである.この低速ストリークは,粗度高さに対して,長さが数十倍,幅が数倍のサイズを持つ瞬時に発生する構造であると考えられているが,ストリークの大きさは統計的に確認されていなかった.そこで,全計算時間中における低速ストリークの長さ,幅をサンプリングすることで,特徴的な粗度高さの数十倍の構造だけでなく,それよりも小さいストリークが頻発することを示した. 風洞実験では,これまでのスカラーソースを塗布した床面からの平均輸送量の測定に加えて,空間内のスカラー濃度分布の測定を行った.その結果,粗度表面において,風速プロファイルと同様にスカラー濃度分布が対数則に従うことや,輸送量の長さスケールに相当するスカラー粗度が幾何形状に依存することを示した.さらに,スケールや手法の異なる既往研究との比較から,運動量粗度とスカラー粗度に普遍的な関係式が成立すること示し,これまでの風洞実験結果が,数値解析の検証データとして適用できることを示した.
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