2011 Fiscal Year Annual Research Report
キラルなLewis塩基を有機分子触媒とした新規不斉反応の探索
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10J01519
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
下田 康嗣 熊本大学, 大学院・薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タンデム反応 / Lewis塩基 / 不斉反応 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、Lewis塩基を触媒とすることによるメチルケトン1分子とアルデヒド2分子間において連続的アルドール反応が進行し、ダブルアルドール付加体が高い化学収率および良好なエナンチオ選択性で得られることを見出している。本反応の一般化、さらにはその反応機構の解明を目的として検討を行った。 種々反応条件の精査を行ったところ、溶媒にジクロロメタンおよびプロピオニトリルの混合溶媒を用いた場合、連続的アルドール付加体が高い化学収率および立体選択性で得られることを見出した。本反応は様々なメチルケトンに適用可能であり、様々な基質において高いエナンチオ選択性を有する付加体を得ることが可能である。 本成果を"Enantioselective Double Aldol Reaction Catalyzed by Chiral Phosphine Oxide"という題名で論文を作成し、Chemistry A European Journal誌に掲載された。 前述の結果の他、ごく最近ではあるが、2箇所の反応点を有する脂肪族メチルケトンを用いた場合、それぞれの反応点でアルデヒドが1分子ずつ反応した付加体が得られることを見出した。この付加体は、3つの不斉炭素を有するにもかかわらず、ほぼ単一の化合物を得ることに成功している。 さらに、エノン構造を有するメチルケトンを利用することで、連続的アルドール反応の進行の後、生じたヒドロキシ基とエノンが反応した、ジヒドロピラノン誘導体が得られることを見出した。これらの手法はいずれも一挙に複数の不斉中心を制御することが可能であるため、今後展開により有用なツールとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで開発してきた連続的アルドール反応を基盤とすることで、新たな2つの反応へと展開することができた。 これらの手法は、一挙に複数の不斉中心を構築可能であるため、今後の更なる応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
先述した一挙に複数の不斉点を得る手法の反応機構の解明を行う。その結果をフィードバックすることにより、最適な触媒の設計・合成を行い、選択性の改善を試みたい。 本手法は、一挙に複数の結合を構築することが可能であるため、反応工程の短縮が可能であると考えられる。そこで、本手法を利用した天然物等の生物活性物質の全合成を行い、本手法の有用性を実証したい。
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