2011 Fiscal Year Annual Research Report
短行程ステロイド骨格構築法を基盤とするバトラコトキシンの全合成研究
Project/Area Number |
10J01552
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 恵理子 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ステロイド / アルカロイド / 鈴木-宮浦カップリング / ドミノ環化 / ラジカル環化 / 全合成 |
Research Abstract |
ステロイド骨格を有するアルカロイドであるバトラコトキシンは、南米コロンビアの熱帯雨林に生息するヤドクガエルPhyllobates属から単離構造決定され、陸上生物から単離された非タンパク系有機化合物の中で最も強力な毒性を有する。バトラコトキシンは、その構造の複雑さから、多くの合成化学者のターゲットになっているが、未だ全合成は達成されていない。本研究では、立体選択的にバトラコトキシンを合成するため、バトラコトキシンの4環性骨格を構築したのちに、N、Oを含む7員環を形成し、さらに側鎖を導入して全合成を達成するとともに、本研究で得られた知見をもとにした、ステロイド骨格の一般的かつ簡便な構築法の開発を計画した。 まずは、ABC環部構築のモデル実験を行うこととした。三置換ベンゼン誘導体を出発原料とし、鈴木-宮浦カップリング、シアノヒドリンを経由するアルキル化、還元的アミノ化により、環化前駆体を合成した。エノールシリルエーテルに四塩化スズを作用させたところ、AB環部の環化が進行し、さらにベンジル位のシロキシ基が脱離した3環性化合物が得られた。基質の多くは、強いルイス酸である四塩化スズによって分解してしまったと考えられたため、より穏和な反応条件である、ラジカルを用いたドミノ環化を検討することとした。置換ベンゼンから同様の手法により環化前駆体を調製した。ケトエステルに酢酸マンガン(III)を作用させたところ、マンガンエノラートを経由してAB環部の環化が進行し、3環性骨格を有する望むcis^-デカリンの合成に成功した。このとき、縮環部の立体化学が異なるtrans^-デカリンに加えて、エノールエステルが副生した。選択性の課題は残ったものの、四塩化スズを用いる場合に比べ、環化体の合計収率は大幅に向上した。現在、ラジカルを経由するドミノ環化による4環性骨格の一挙構築を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
効率的に環化前駆体を合成し、ルイス酸を用い、3環性骨格を有する望むcis^-デカリンの合成に成功した。さらに改良を加え、ラジカルを経由するドミノ環化により、環化体の合計収率は大幅に向上した。以上の事由により、研究はおおむね順調に進行していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル実験で得られた知見をもとに、バトラコトキシンの主骨格すべての炭素を導入した環化前駆体での4環性骨格の一挙構築を検討する。さらにE環部の構築とピロール側鎖の導入により、バトラコトキシンの全合成を達成する。また、全合成達成後は、バトラコトキシンの構造活性相関研究及び、結合部位や受容体タンパク同定のための標識化を行なう。
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