2011 Fiscal Year Annual Research Report
液晶反応場での電解重合による配向性高機能高分子薄膜の合成
Project/Area Number |
10J01603
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川畑 公輔 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電解重合 / 共役系高分子 / ネマチック液晶 / スメクチック液晶 / 磁場配向 |
Research Abstract |
23年度においては、初年度に合成したモノマーを、ネマチック液晶およびスメクチック液晶中で電解重合を行い、得られた共役系高分子薄膜の光学的異方性を評価した。また、反応溶媒として用いた液晶を磁場によって一様配向させた状態においても同様に電解重合を試みた。得られた高分子薄膜は偏光顕微鏡観察の結果から、反応溶媒として用いた液晶が有する光学模様と同様の光学模様を示すことから、ネマチック相だけでなくスメクチック相においても、液晶の配向方向に沿って異方的に高分子鎖が成長したものと考えられる。また、磁場によって一様配向させたこれらの液晶中で合成された高分子膜は、巨視的な直線偏光二色性を示し、二色比はネマチック液晶中で合成された高分子膜よりも、スメクチック液晶中で合成された高分子膜の方が大きく、高い配向性が得られた。これはネマチック液晶よりもスメクチック液晶の方が液晶分子の熱揺らぎが小さく、配向パラメータが高いために、高分子鎖の配向度もより高くなったものと考えられる。このことから配向度の高い高分子膜を得るためには、ネマチック液晶よりも配向度の高いスメクチック液晶を用いることが有用であると考えられる。しかし、スメクチック液晶は流動性が小さいため、液晶中でのモノマーの拡散スピードおよび熱運動が小さく、重合活性が下がることが分かった。また、初年度に引き続き、種々の分子構造をもつモノマーの合成を行い、液晶中での電解重合を試みた。その結果、分子骨格にビニル基を導入したモノマーにおいても、液晶中での電解重合によって配向性の共役系高分子薄膜を与えることが分かった。以上の結果から、溶媒として用いることが出来る液晶および、配向性の高分子膜を与える電解重合可能なモノマーの適応範囲が広がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
流動性が低いため、これまで電解重合の溶媒には適さないとされていたスメクチック液晶においても、適当な液晶分子を選択することによって、電解重合が可能であることがわかり、液晶を用いた配向性高分子膜合成のための重要な知見を得ることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
溶媒として用いる液晶分子およびモノマーの分子構造と、得られる高分子膜の配向性との一般的な関係性を明らかにするために、さらに数多くの種類の液晶分子およびモノマーについて検討する。また、当初、電解重合法における高分子鎖の配向制御を目的として、液晶を溶媒として用いてきたが、等方性溶媒中での電解重合においても高分子鎖の自発的配向を確認したため、この系についてもモノマーの分子構造、溶媒選択、重合条件などを変えて配向性高分子膜形成のための条件を検討する。
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