2011 Fiscal Year Annual Research Report
植物葉緑体RNAポリメラーゼのppGpp結合部位に関する研究
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10J01668
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
佐藤 道大 静岡県立大学, 薬学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | stringent response / ppGpp / RSH / ヒメツリガネゴケ |
Research Abstract |
ヒメツリガネゴケにおけるRSH遺伝子のクローニングおよび機能解析 これまでの研究より、ヒメツリガネゴケが有する9つのRSH遺伝子の発現量は、植物にとってストレスとなる紫外線やアブシジン酸処理により、顕著に上昇することが明らかとなった。このうち、最も強く発現しているP_pRSH1およびP_pRSH2に注目し、ヒメツリガネゴケにおけるRSH遺伝子の機能解明を目的に研究に着手した。まずP_pRSH1およびP_pRSH2の過剰発現株を作製することにした。得られたそれら欠損変異株はともに、野生株と比較して茎葉体の数が増加するという表現型を示した。RSHタンパク質は植物においては葉緑体に局在しており、葉緑体内において機能していることが示唆されている。また、RSHタンパク質産物であるppGppは原核生物の転写翻訳活性に影響を与えることから、次に、野生株および変異株の葉緑体タンパク質について二次元電気泳動により解析した。その結果、グルコース含有培地で生育させたときにのみ、そのタンパク質プロファイルに変化が現れた。すなわちグルコース含有培地において、ルビスコ大サブユニットタンパク質の含量が有意に減少していることが明らかとなった。さらに遺伝子発現レベルにおいてもルビスコ大サブユニットの発現が減少していることも示された。このことは、RSH遺伝子がグルコース代謝と光合成に関わっているというこれまでにない新たな知見を示すものである。植物におけるRSH遺伝子の機能に関する報告はこれまでにほとんどなされておらず、本結果はRSH遺伝子の機能を解明する重要な足がかりとなると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物におけるRSH遺伝子の機能を解明することが本研究の目的であり、研究を行った結果、これまでに報告されていない知見を得ることができた。本研究結果は植物における緊縮応答研究の新たな道筋となりえる。
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Strategy for Future Research Activity |
植物における緊縮応答研究であるので、いずれは高等植物を用いた実験を行う必要がある。今回は、高等植物よりも進化的に原核生物に近いヒメツリガネゴケを用いた研究であり、本研究で得られた知見を高等植物に応用する必要がある。すなわちモデル高等植物であるイネやタバコを用いて、RSH遺伝子が葉緑体の機能に関わっているのかを明らかにし、葉緑体の機能改質を介したストレス耐性を有する植物の創成へとつなげたい。
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Research Products
(4 results)